Case Studyお客様事例

戦略的デジタル人材育成による
データドリブンな現場運営の実現

DIC株式会社様

(左から一番目)別所信明様 DIC株式会社 生産企画部 GM
(左から二番目)加藤将敏様 DIC株式会社 生産企画部 マネジャー
(右から一番目)棚橋誠   株式会社ディジタルグロースアカデミア

印刷インキ、有機顔料、PPSコンパウンドで世界トップシェアの化学メーカーであるDIC様の生産部門では、データ利活用による製品品質の向上や業務効率化などの価値の実現を目指しています。データ収集の必要性や収集したデータの見方・扱い方を理解し、業務で実践できるスキルの底上げが必要だと考え、2022年4月に生産部門向けのデータ活用基礎研修を企画・開発し、6月に同研修をスタートさせました。1回目の研修を終えて約3か月。今回、研修立ち上げの経緯や教材開発・研修実施で重視したポイント、研修実施後の職場の変化について、生産企画部の別所様、加藤様にお話し伺いました。

DIC様がデータ活用の人材育成を全社向けに始められたきっかけを教えてください。

別所様:
DIC様の事業内容やビジネスの目指す姿、それに対する課題感

DICは、人々の生活に欠かせない包装材料、テレビやPC等のディスプレイに代表される表示材料、スマートフォンなどのデジタル機器や自動車に使用される高機能材料等の製造・販売を世界63の国と地域で展開しています。2022年2月に長期経営計画「DIC Vision 2030」を策定し、「彩りと快適を提供し、人と地球の未来をより良いものに −Color & Comfort−」を新経営ビジョン(パーパス)として再定義しました。2030年に向けて、“DICが貢献する社会”を「グリーン」「デジタル」「Quality of Life(QOL)」とし、重点領域として設定した「サステナブルエネルギー」、「ヘルスケア」、「カラーサイエンス」、「サステナブルパッケージ」、「スマートリビング」を中心に“社会の持続的繁栄に貢献する事業ポートフォリオを構築”と“地球環境と社会のサステナビリティ実現に貢献”を目指しています。

データ活用の人材育成を立ち上げるに至った旗振り役や主管部署の存在と立ち上げまでのプロセス

DIC Vision 2030では、人材を経営戦略実行における重要な「資本」としてとらえ、「人的資本価値を最大化する戦略的人材ポートフォリオ構築」実現のために、3つの重点施策と、それを支える人事機能プラットフォームの整備を打ち出しました。具体的には「人材育成」、「人材流動性(採用・維持・サクセッション)」、「エンゲージメント向上・組織力向上」を重点施策として位置づけ、同時に「働く枠組み」、「リスクマネジメント」、「カルチャー /働き方改革」の観点から人事機能プラットフォームの整備を行い、人的資本経営の強化に取り組んでいます。

その中で生産部門ではIoTの導入が進む中、収集されたデータ量が急速に拡大し、多種多様な大量のデータが蓄積されていますが、データ量が膨大、構造が複雑であるため活用されず死蔵しているケースが多く見受けられています。これらのデータを整備して、戦略的データ利活用による製品品質の向上や業務効率化などの価値を実現することが求められており、業務内容に精通しつつ、デジタルで何ができるかを理解し、DX の取り組みをリードする人材、その実行を担っていく人材の拡充が必要であります。これらの背景からDICにおいても生産部門のとりまとめを担う生産企画部が旗振り役となって、総務人事部と協同で生産部門のDX人材育成体系構築に取り組むこととしました。

別所信明様

生産部門向けの教育を企画するにあたり、どのようなことを重視されましたか?

加藤様:
生産部門が抱える課題に対して、何を教育で解決しようとしたのか

DICの生産部門では、デジタル・DXを手段として、ダントツのコスト競争力、品質向上、働き方改革を目標に掲げて取り組んでいます。目標達成のためには、勘や経験や度胸といった属人的な現場運営の要素を出来る限り排除して、FACT(=データ)に基づいたデータ駆動型の現場運営を実現させることが欠かせません。各事業所・現場でデータドリブンに対応できる人材を必要数育成することが教育の目的です。

教育の目的・目標

DIC生産部門では高度なデータ分析やデータ活用を出来る人材(Level.1)を頂点としたデータ活用人材育成体系の階層ピラミッドを策定しています。基本となるLevel5講習については2027年まで年3回実施し、事業所毎にデータ駆動型の現場運営に対応できる人員を一定数確保するのが目標になっています。

加藤将敏様

ディジタルグロースアカデミアを選んでいただいた理由は何ですか?

別所様:
DIC様の教育企画とディジタルグロースアカデミアの訴求ポイントでマッチした点

様々な研修会社から提案をいただき確認しましたが、一般的なデータ活用教育に関する内容が多く、化学プラントの現場オペレーターが対象となるDICの生産部門にマッチした教育プログラムは中々見いだせないでいました。そのような中で、ディジタルグロースアカデミアに相談したところ、こちらの要求に対応した提案内容もしっかりしていて、一般的なデータ利活用研修のエッセンスにプラスする形で、現場ですぐに実践出来るDIC生産部門専用の研修プログラムを開発する提案を頂けたので、お願いすることとしました。

棚橋誠

教材開発や研修実施ではどのようなことを重視されました?

加藤様:
教育の目的・目標を達成するためにこれだけは入れたいと思われたポイント

データ分析テーマの正否を決定づけるデータ準備の重要性はもちろんのこと、現場に持ち帰って自部署のデータの活用イメージが持てるように、実際に業務で使用されているプロセスデータを元に、教材の開発を依頼しました。

各部へ新たに開発した研修受講の必要性を理解いただくために、どのような工夫をされましたか?

別所様:
各職場への理解活動における訴求ポイント

生産部門のDX推進の進捗について、経営層や各事業所へ定期的に報告を行っています。その中でデータ活用に関する人材育成の重要性についても説明し、啓蒙活動を実施しています。データ活用人材の育成に関する社内での理解も広まりつつありますが、どうしても現業が優先になることもあり、研修参加が後回しになるケースもあります。その壁を乗り越えて、さらにデータ活用を浸透させていくために、繰り返し説明し、継続的に啓蒙する必要があります。

研修を実施して、受講前後で受講生やその職場のデータ活用に関してどのような変化がありましたか?

加藤様:
研修終了時の受講生の変化

一連の手法を理解することで自職場における課題をデータから見いだして、アプローチするきっかけをつかめたとの声が多く挙がっています。実際にデータ分析の手法を駆使して課題を解決するには、更なる知識や経験、アクションに対する上司の理解等が必要となりますので、研修メニューの充実等が必要になってくると考えています。

職場に戻った時の各職場の変化

データに基づいた現場運営・生産活動が各職場で行えるよう、できる限り多くのデータ収集を行う、あるいはデータ収集を行えるように設備導入を検討する、データが活用できるように分析できる形に整理する等のアクションを実施していくとの声が受講者から挙がっています。まだ生産部門のデータ活用人材育成の取り組みを始めたばかりですが、受講者を中心としたマインドの変化が実際のアクションとなり、ボトムアップからのムーブメントとなるように、主管部署として注視していきます。

最後に、さらなるデータ活用の風土醸成を目指して、今後の展望を教えてください。

別所様:
残課題とそれに対する施策

データドリブンな現場運営の実現に向けて必要となる高度なデータ分析やデータ活用を出来る人材(Level.1)を生産部門で育成するために、生産部門向けの教育を拡充することを考えています。今回はデータ活用の基礎(Level.5)について取り組みましたが、データ活用人材育成体系の階層ピラミッドに基づいて、データ処理を含めたLevel.4以降の階層に対応できる教育プログラムの導入を検討していきます。また、研修を受講した部下が職場実践で提案したものに対して、上司が適切にコミュニケーションや意思決定できる風土を醸成するために、マネジャーや課長層のリテラシーアップを図り、各職場がデータドリブン経営できる環境をより整備しています。

ビジネスの目指す姿実現に向けたその他の施策

DICではスマートファクトリーの実現に向けて、様々なデジタル技術を生産現場に広く展開することで、業務負荷を軽減し、かつ安全・安定操業を目指しています。データの高度活用においては、日立製作所との協創により、製造プロセス全体を自動化するデジタルツイン技術の実用化に取り組んでいます。本協創では、サイバー空間でAIなどを用いた高精度な反応予測モデルにより運転状況をデジタル化するとともに、Process Informaticsにより最適な運転条件を導き出し、それらをフィジカル空間(現場)にフィードバックする仕組みを構築します。これにより、現場でのサンプリングによる品質確認工数が最小となり、品質の安定化、オペレーターの作業効率向上、新製品導入時の立ち上げ期間短縮が図れるとともに、生産性向上によるCO2排出量の削減にも貢献します。また、構築したモデルを他工場に展開することで、製造拠点ごとの品質誤差や生産品目の偏りを抑制することが期待できます。

(左から一番目)別所信明様、(左から二番目)加藤将敏様

ありがとうございました。

【編集後記】

生産部門が掲げる目標達成に向けて、これまでの経験や勘や度胸による意思決定から脱却し、事実であるデータと向きあった仕事の進め方にシフトさせる、そして定着させる。そのために、関係部署と協同した上で、いかに自分事化でき、いかに職場実践や成果出しにつなげられる研修とするのかを深慮されている様を伺うことができました。今回はスタッフ層を対象に、データ活用の必要性や基礎的な扱い方を理解するための第一歩(底上げ)の取り組み内容でしたが、組織のデータドリブン経営を実現するために、次の施策を共に構築できればと感じます。

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