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AIとDXの違いは?成功事例や活用する注意点も紹介

  • 公開日:2023年3月3日

ビジネスの領域において、デジタル技術はさまざまな種類や形態を作り上げながら発展を続けています。そのなかでも、急成長を見せているのがDXの推進にも活用されるAI(人工知能)の存在です。

しかし、AIの活用によって業務効率化や品質の向上などが期待できる一方で、適切な量や質を確保したデータの用意といった事前準備に加えて、それを扱う人材が必要になるのも実情です。

本記事では、AIとDXの違いやAIにできること、成功事例や活用する際の注意点も紹介します。AIの活用がなぜ必要とされるのかにも触れるため、ぜひ最後まで読んでみてください。

AIとDXの違いは?

AIとDXの違いをわかりやすくすると「DXは目標」「AIは手段」となります。

AI(人工知能)は、機械学習や自然言語処理、画像認識などの技術を使用し、人間の思考および行動を学ぶことで人の代わりを実現する技術のことです。自動運転や音声認識アシスタントは、身近にあるAIの代表例です。

一方でDX(デジタルトランスフォーメーション)は、ビジネスプロセスをITおよびデジタル技術で変革し、価値を創造することで競争優位性を確保することを指します。このDXの推進にはAIを含めて多くのIT・デジタル技術が手段として用いられることから、達成すべき目標として考えられます。

企業がDX戦略を成功させるためには、AIを含むデジタル技術を活用することが必要です。

AIとは?

人工知能(AI)は、現代社会で進展するテクノロジーで、「人が持つ知覚や知性を再現するもの」と捉えられることが一般的です。この定義は一意でなく、多岐の分野で議論され、完全な認識や感情理解ができるわけではありません。

しかし、医療や金融など特定の領域で人間を凌ぐ能力を示すこともあります。AIの進化はルールベースからディープラーニングへと変遷し、精度向上が見られ、ビジネスでの活用が進んでいます。AIの活用は目的に応じた手法選択と融合が重要であり、未来のビジネス課題へのソリューションとしての位置づけが高まっています。

AIにできることとは?

AIの活用で実現できることは、以下が挙げられます。

  • 画像・映像認識
  • 音声・言語認識
  • データ分析・予測
  • 異常検知

機械学習やディープラーニングのアルゴリズムを活用し、解決したい課題の多くに対応できる可能性を秘めています。

画像・映像認識

AIによる画像・映像認識は、コンピューターが画像や映像の中から以下を自動的に検出・認識する技術を指します。

  • 物体
  • 人物
  • 動作
  • 状態など

膨大な画像や映像データを学習することで実現でき、自動車の安全運転支援システムによる安全性の検出や、セキュリティカメラの映像解析などを実現できます。

映像認識では、動画の自動検索や分類であったり、映画やテレビの字幕生成などが活用の代表例です。

音声・言語認識

AIによる音声・言語認識は、音声や言語を自動的に認識する技術を指します。音声波形やテキストデータに基づいて、以下を理解して音声や言語を認識しています。

  • 音声・言語の構造
  • 音声・言語の文法
  • 単語の意味 など

AIによる音声認識技術は、音声入力によるコマンド操作や、音声アシスタントの開発などに用いられます。また、言語処理技術は、自動翻訳システムやテキストマイニング、自然言語処理などが代表例です。

データ分析・予測

AIによるデータ分析・予測は、データの中から傾向やパターンを検出・分析し、将来の予測を行う技術を指します。用意したデータの中から自動的に規則性や関連性を見つけ出し、将来的な予測を行うといった形でビジネスに活用されます。

例えば、金融業界における株価を予想したり、マーケティングにおける消費者行動を予測したりなどが代表例です。人間が扱いきれないほどのデータ量でも扱えるため、分析に基づいた高度な予想・予測を意思決定の参考にできるでしょう。

異常検知

AIによる異常検知は、データの中から通常と異なるパターンや傾向を自動的に検出し、異常を検知する技術を指します。わかりやすくすると、健康な状態から「何らかの異常」となる傾向を検知して知らせてくれるというものです。

例えば、製造業においては設備の異常検知や品質管理に活用でき、ITの領域ではセキュリティにおける不正アクセスや不正使用の検知などにも用いられます。

異常検知によって問題の早期発見や迅速な対応が可能となれば、安定したサービスの供給といったことが実現できます。

DXとは

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、AIやIoTを駆使して業務フローの変革や新ビジネスモデル創出、そして企業文化の刷新を目指すものです。2004年にスウェーデンのウメオ大学で提唱されたこの概念には、革新的なイノベーションでデジタル・ディスラプションを生み出す目的があります。

これにより、企業の既存の価値観を一新し、デジタル技術の破壊的変革を実現させることがDXの目的と効果です。

DXの重要性

DXの重要性は、時代の変化と市場競争に対応するための要だということです。『DXレポート』での「2025年の崖」の議論が、この重要性を際立たせています。既存システムの老朽化や担い手の高齢化、IT人材不足などが挙げられますが、最も深刻なのは、市場や環境の変化に柔軟に対応できず、デジタル競争で敗者となる危険性です。また、システム維持の高費用やセキュリティリスクの増加なども懸念されています。

DXは、企業の成長と競争力を高めるための戦略であり、革新的なイノベーションを促進する道です。しかし、その実現にはさまざまな課題と危険性が伴います。市場や環境の変化への迅速な対応が求められる一方で、システムの老朽化やセキュリティリスクの管理も必要で、バランスを見極めることがDXの成功への鍵となります。

DX推進にAIは必要?

DX推進において、AIは急速に変化する世の中の動きを適切に分析し、素早くそしてできる限り正確に判断するために必要な技術と考えられます。データの解析や予測を高度化でき、VUCA(ブーカ・Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguity)と呼ばれる未来予想の難しい社会・ビジネスへの適応力を高められるためです。

また、 AIはデータ量が多いほど精度も高まる技術である特徴から、膨大なデータを取り扱いつつ、その変化や傾向に基づいた意思決定が求められるビジネス分野においては必須となる見込みです。

DX推進で必要となる業務プロセスの効率化や、新たなビジネスモデルの創出などにおいて、AIは多岐にわたって利活用できるでしょう。

AIを活用したDX推進の事例

AIを活用したDX推進の事例は数多くありますが、以下に代表的なものをいくつか紹介します。

無人決済システム
  • 株式会社ファミリーマート
  • 株式会社TOUCHTOGO
  • 東武鉄道株式会社
  • 東武商事株式会社
  • ウォークスルーの効率化を実施
  • 完全無人化・短時間化を実現
待ち時間予測システム
  • 羽田空港
  • 混雑状況のリアルタイム解析
  • 待ち時間の予想、可視化による判断サポートを実現
デジタルサイネージ
効果測定システム
  • 株式会社オープンストリーム
  • 日本コンピュータビジョン株式会社
  • NEXCO西日本コミュニケーションズ
  • 注視時間等の効果測定を実施
  • コンテンツ傾向の把握および投資対効果の最適化を実現

その他にも、小売業ではAIによる顧客分析による販売促進や売上増加を実現でき、製造業ではIoTデバイスによって収集されたセンサーデータをAIで解析することで生産性の向上や不良品の削減なども実現できます。

また、金融業界ではAIによるリスク評価や不正行為の検知によって、信用リスクの低減や不正行為の防止が実現するといった形で、多くの領域で価値を生み出せるでしょう。

DX推進する上でのポイント

DXの推進は、企業の競争力向上や業務効率化に欠かせない要素です。以下は、DX推進を成功させるための重要なポイントと手順です。

  • ビジョンと戦略の明確化
  • 最高経営責任者(CEO)や経営陣のコミットメント
  • 従業員への教育
  • プロジェクトマネジメントとスケジュール管理
  • テクノロジーの選定と導入
  • ビッグデータの活用と分析
  • アジャイルなアプローチ
  • 透明性とコミュニケーション
  • 評価と改善のサイクル

ビジョンと戦略の明確化

ビジョンと戦略を明確にすることで、目的に合致したシステムや方法を選ぶ基盤を築くことができ、目的が明確でない場合、失敗する可能性が高まります。

方向性が確立されることで、全体の方針が統一され、取り組みがスムーズに進むためです。具体的には、目標を達成するためのKPI設定やロードマップの策定などが挙げられます。明確なビジョンと戦略は、失敗を回避し、効率的なDX推進の礎となります。

最高経営責任者(CEO)や経営陣のコミットメント

経営レベルでの意識改革が重要で、経営者が主導して全社的に推進する必要があります。DX推進の成功は、経営陣の強いリーダーシップと意欲によって大きく左右されるからです。

例として、経営者自身がDX推進のプロジェクトリーダーを務める、定期的な進捗報告会を設けるなどがあります。経営陣の強いコミットメントが、組織全体のモチベーション向上に繋がります。

従業員への教育

DX推進への理解を深め、協力を得るために、従業員への教育が不可欠です。従業員全員がDXの重要性を理解し、協力することで、実施が円滑に進むためです。

具体例には、定期的な研修や勉強会、専門家によるセミナーなどが考えられます。従業員教育は、全体の一体感を高め、成功への道を開くことができるでしょう。

プロジェクトマネジメントとスケジュール管理

DX推進のプロジェクト管理とスケジュールの整備は、計画的に進めるための基盤となります。タスク管理や進捗確認などを一元化することで、効率の向上とリスク回避が可能となるからです。

プロジェクト管理ツールの導入やガントチャートの使用などが挙げられます。適切なプロジェクトマネジメントとスケジュール管理は、DXプロジェクトの健全な推進をサポートします。

テクノロジーの選定と導入

最新のデジタル技術やITの選定と導入は、DXの具体的な実施に直結します。適切な技術の選定が、効果的なビジネス変革に欠かせないからです。

クラウドサービスの導入やAI技術の活用など、ビジネスニーズに応じた選択が求められます。テクノロジーの選定と導入は、DX推進の中核をなし、成果を最大化することにもつながるでしょう。

ビッグデータの活用と分析

データを活用し分析することで、業務効率化や新たなビジネスチャンスを創出します。データ駆動による意思決定が、ビジネスの新しい可能性を引き出すからです。

顧客データの分析によるマーケティング最適化や、在庫管理の自動化などが可能です。ビッグデータの活用と分析は、競争力の向上と成長をもたらします。

アジャイルなアプローチ

アジャイルなアプローチで、状況に応じた計画変更が可能になります。変動するビジネス環境に素早く対応するため、アジャイルな思考が不可欠だからです。

スクラムやカンバンなどのアジャイル手法の導入で、プロジェクトの柔軟な運用が可能です。アジャイルなアプローチは、ビジネス環境の変動に対応するためにも不可欠です。

透明性とコミュニケーション

プロジェクトの進捗状況を透明にし、コミュニケーションを図ることで、スムーズな推進が可能になります。透明性の確保は、全体の方向性を明確にし、チーム間の認識を合わせる重要な工程です。

確かな透明性とコミュニケーションの確保によって、期待と現実のギャップを埋め、プロジェクトの遅延を防ぎます。

例えば、週次の報告会を設けたり、プロジェクト管理ツールを活用したりすることで、情報共有が容易になります。この結果、DX推進のリスクを軽減し、目標達成への道筋を明確にする役割を果たします。

評価と改善のサイクル

推進途中での評価と改善のサイクルを回すことで、より効果的なDX推進が実現します。進行中のプロジェクトの途中評価は、早期に課題を発見し、修正するチャンスを得るためにも大切です。

失敗のコストを削減し、より適切な方向にプロジェクトを進めることが可能となります。具体的には、プロジェクトのマイルストーンごとに、成果物のレビューを実施したり、ユーザーフィードバックを収集して改善したりすると良いでしょう。評価と改善のサイクルによって、DX推進は柔軟に進展し、最終的には成功へと繋がります。

AIを活用してDXを推進する注意点

DXの推進におけるAIの活用で失敗しないために、注意点をいくつか紹介します。

導入する目的が明確になっていない

DXの推進でAIを導入する目的が明確になっていなければ、効果的な分析および解析を実現できずに終わってしまいます。そのため、DX推進によって到達を目指す目標や、実現したい目標を明確にするために、以下の2つを考えます。

  • 現状の課題や問題点
  • AIの活用で解決したい課題

例えば、人的ミスによる業務の遅延や品質低下の場合にはAIによる自動化でミスを減らす、情報の不足による意思決定の遅れなどであれば、AIによるデータ分析によって迅速な意思決定を実現するなどが挙げられます。

DXの推進目的を決定できると、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)やNLP(自然言語処理)などの種類から必要なAIを絞り込めるのも利点です。

ロードマップを引いてない

AIを活用したDXの推進には、優先して取り組むべきタスクを明確化でき、適切なアプローチを実践できるロードマップの策定が必要不可欠です。また、コストの最適化に加えて、達成したい組織体制を実現するためにも活用できます。

DXロードマップを引く際には、以下のステップを実践しましょう。

  1. ビジョンを明確化する
  2. 現状を分析する
  3. 自社の強みを調査する
  4. マイルストーンおよび指標を設定する

ロードマップはAIをどの領域で活用するかを明確化でき、適切な種類や設計を決定することにも活用できます。策定する際には、AIの適用範囲や優先順位、タイムラインや予算、導入後の運用や改善なども含められると精度を高められるでしょう。

またロードマップは結果に基づいて定期的に改善し、目的を再確認しながら達成が必要なタスクを適切に処理できる状況を作り上げましょう。

用いるデータの精度が低い

DXの推進でAIを活用する際に、用いるデータの精度が低いと、導き出される結果の精度も下がります。また、その結果を取り扱うとき、誤った判断へつながる可能性も同時に高まるでしょう。

  • データ量を増やす
  • 不正確なデータは排除する
  • 欠損値は補完する

データが少ない場合には標本誤差が大きくなり、検討に値するほどの正確性を高めた結果を得にくくなります。また、不正確なデータの排除・欠損値の補完などのデータクレンジングの工程だけでも、AIの精度を高められるので事前準備として行っておきましょう。

AIを十分に活用するためにも、データの量と質には目を向けておくことが大切です。

AIの知識がある人材がいない

DXの推進でAIを活用する際には、それを扱えるだけの知識を保有する人材が必要です。例えば、データサイエンティストは代表例でしょう。

自社に人材が不足している場合には採用・育成によって自社で完結する方法と、AI専門のコンサルタントおよびベンダーの利用によって補完する方法の2つが挙げられます。

AIに関する書籍やオンライン講座・研修、ワークショップなどを利活用し、AIやデータの取り扱いに長けた人材の確保と、それを支える環境づくりまで視野に入れて動き出しましょう。

まとめ

DXの推進においてAIを活用できると、データの解析や予測を高度化でき、VUCA(ブーカ・Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguity)と呼ばれる未来予想の難しい社会・ビジネスへの適応力を高められます。

  • 画像・映像認識
  • 音声・言語認識
  • データ分析・予測
  • 異常検知

などのAIが得意な分野において、どのように導入するのかをDXで達成したい目標から逆算して考えましょう。ただし、AIを活用したDX推進を検討した際には、明確な目的とロードマップの作成に加えて、それに対応できる人材の育成が必要不可欠です。

ディジタルグロースアカデミアでは、DXの推進に必要な人材を育成するために活用できる研修や、IT知識を学べる研修を提供しています。AIを扱えるほど質の高い人材の育成を達成するためにも、ぜひお気軽にお声がけください。

【監修】

日下 規男
ディジタルグロースアカデミア マーケティング担当 マネージャ

2011年よりKDDIにてIoTサービスを担当。2018年IoTごみ箱の実証実験でMCPCアワードを受賞。
2019年MCPC IoT委員会にて副委員長を拝命したのち、2021年4月ディジタルグロースアカデミア設立とともに出向。

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