IT人材スキルマップ「ITSS」とは?政府が提示した理由も紹介
更新日:2023年11月22日
IT業界は急速に変化しており、自身のスキルセットを把握し、必要なスキルを習得することが成功の鍵です。その際、スキルマップはIT関連の能力を明確化し、自身のスキルレベルを評価する便利なツールとなります。
この記事では、ITスキル標準(ITSS)を活用してスキルをマッピングする方法やレベルについて紹介します。ぜひスキルマップを活用してキャリアを発展させていく参考にしてください。
目次
ITスキル標準(ITSS)とは
ITスキル標準(ITSS)は、IT関連サービスの提供に必要な能力を明確化・体系化した指標です。この指標は、産学でのITサービス・プロフェッショナルの教育・訓練に有用な「ものさし」を提供する目的で作られました。
具体的な活用例としては、企業戦略に沿った人材育成・調達、教育・研修プログラムの提供、個々のプロフェッショナルのキャリアパス設計などがあります。
政府がITスキル標準を提示した理由
政府がITスキル標準を提示した背景には、IT産業の変化と人材育成の戦略的な必要性があります。以前は、市場が需要過多であったため、専門知識を問わずに人材を採用していました。
しかし、IT用途の多様化と技術の進展により、より高度なスキルが求められるようになりました。このような状況で、戦略的な人材育成・スキル開発が求められ、そのために客観的な指標も必要とされました。
政府がこの指標を提供することで、企業、教育機関、個々のプロフェッショナルが有機的に連携し、ITサービスの質が向上すると考えられています。
ITスキル標準(ITSS)が規定する7段階のレベル(縦軸)
ITスキル標準(ITSS)が規定する7段階のレベル(縦軸)は、下記の通りです。
レベル | 説明 |
---|---|
レベル1 | 基本的な知識と受け入れる姿勢が必要 |
レベル2 | 指導の下で作業を遂行し、コミュニケーション能力も必要 |
レベル3 | 自己管理と効率化に取り組み、独力で作業を遂行 |
レベル4 | 複数の課題をリードし、他の分野にも関心を持つ |
レベル5 | テクノロジーやビジネスを創造し、リードする能力 |
レベル6 | 社内外でテクノロジーやビジネスを創造し、リードする能力 |
レベル7 | 世界で通用するスキルと実績を持つ |
ここからは、それぞれ詳しく紹介します。
レベル1
ITSSのレベル1では、情報技術に関わる者が持つべき最低限の基礎知識と、自らのキャリアパスに向けて積極的なスキルの研鑽を行うことが求められます。
このレベルでは、情報技術の基本的な用語や概念を理解し、自分の役割や責任を認識することが大切です。また、自分のスキルや経験を客観的に評価し、上位者や先輩からのフィードバックを受け入れて改善する姿勢も必要です。
レベル2
ITSSのレベル2では、上位者の指導の下で要求される作業を適切に実行することが求められます。プロになるために必要な基本的な知識と技能を身につけることが目標です。
また、作業の目的や手順を理解し、問題が発生した場合は適切な対処方法を選択する能力も必要です。さらに、チームメンバーや関係者と協力して作業を進めるコミュニケーション能力も求められるでしょう。
レベル3
ITSSのレベル3では、要求される作業を全て独力で遂行する能力が求められます。そのため、プロになるために必要な応用的な知識と技能を身につけることが大切です。
レベル3まで到達すると、作業の目標や品質基準を設定し、自己管理や自己評価を行う能力や、作業の効率化や改善に取り組む創造性や主体性も求められます。
レベル4
ITSSのレベル4では、自らのスキルを活用して、業務上の課題の発見と解決をリードする能力が求められます。このレベルでは、後進の育成にも貢献することが期待されます。
また、自分の専門分野だけでなく、他の分野や領域にも関心を持ち、幅広い知識や視野を持つことが重要です。さらに、自分の意見や提案を明確に伝えるプレゼンテーション能力や交渉力も必要となるでしょう。
レベル5
ITSSのレベル5では、社内でテクノロジーやメソドロジー、ビジネスを創造し、リードする能力が求められます。レベル5は、企業内で高い評価を受けることが期待される技術力・知識を保有します。
加えて、自分の専門分野だけでなく、企業全体の戦略や方針にも貢献することが重要です。必要に応じて、社内外の多様なステークホルダーと協働してプロジェクトや事業を推進するリーダーシップやマネジメント能力も求められます。
レベル6
レベル6では、レベル5で求められる能力に加えて、全体的な視野も求められます。市場全体で高い評価を受けることが期待され、自分の専門分野だけでなく、社会や産業の課題やトレンドにも敏感に対応することが重要です。
さらに、革新的なアイデアやソリューションを提供するイノベーション能力やビジョン能力も必要です。
レベル7
ITSSのレベル7では、世界で通用するレベルのスキルと実績を持つことが求められます。市場全体から見て、先進的なサービスの開拓や、市場化をリードする能力が必要となります。
また、自分の専門分野だけでなく、国際的な規格や標準にも影響を与えることも不可欠です。加えて、世界的なリーダーや専門家と対等に議論や交流を行うグローバルコミュニケーション能力もときには求められるでしょう。
ITスキル標準(ITSS)が規定する11の職種(横軸)
ITスキル標準(ITSS)が規定する11の職種は、下記が挙げられます。
- マーケティング
- セールス
- コンサルタント
- ITアーキテクト
- プロジェクトマネジメント
- ITスペシャリスト
- アプリケーションスペシャリスト
- ソフトウェアデベロップメント
- カスタマーサービス
- ITサービスマネジメント
- エデュケーション
マーケティング
マーケティングは、ITサービス企業としての事業戦略を策定する役割を果たします。この職種では、市場調査や顧客分析を行い、製品やサービスの価値を最大化する戦略を練ります。
ITの知識が求められるのは、データ解析やオンラインマーケティング戦略の設計など、テクノロジーを活用したマーケティング手法が増えているからです。さらに、SEO(検索エンジン最適化)やSEM(検索エンジンマーケティング)などのデジタルマーケティング手法も必要とされます。
セールス
セールス職種では、製品やサービスを顧客に販売する役割があります。CRM(Customer Relationship Management)システムの運用や、データ解析を用いて効率的なセールス戦略を練る能力が求められます。
ITスキルは、顧客データの管理や解析、さらにはオンラインでの販売戦略にも活用されます。また、SaaS(Software as a Service)製品の販売経験や、API(Application Programming Interface)に関する基本的な知識も有用です。
コンサルタント
コンサルタントは、企業が抱える問題を解決するための専門的なアドバイスを提供します。ビジネスプロセスの最適化や、新しいテクノロジーの導入に関する提案などが主な業務です。
ITの専門知識は、効率的な解決策を提案するために不可欠です。具体的には、データ解析ツールやAI(人工知能)を用いた効率改善、システムインテグレーションなどが含まれます。
ITアーキテクト
ITアーキテクトは、システム全体の設計や構築を担当します。高度なプログラミングスキルだけでなく、システムがビジネス目標に対して効率よく機能するように設計する能力が求められます。
さらに、ビジネス要件とテクノロジーのバランスを取るための戦略的思考も必要です。具体的には、システムアーキテクチャの設計、データモデリング、API設計などが主な業務となります。
プロジェクトマネジメント
プロジェクトマネジメント職種では、プロジェクトの計画から実施、評価までを一手に担います。リーダーシップと共に、リスク管理や品質管理など、多角的なスキルが求められます。
さらに、プロジェクトのスケジュール管理、コスト管理、ステークホルダーとのコミュニケーションも必要です。ITの専門知識を活用して、効率的なプロジェクト運営を行う能力も求められます。
ITスペシャリスト
ITスペシャリストは、特定のIT技術に深い知識とスキルを持つ職種です。セキュリティ対策やデータベース管理など、専門的な業務を担当します。
ITスペシャリストには、最新の技術トレンドを把握し、それを業務に活かす能力が求められます。例えば、クラウドセキュリティやIoT(Internet of Things)に関する専門知識が必要な場合もあります。
アプリケーションスペシャリスト
アプリケーションスペシャリストは、特定のソフトウェアアプリケーションに関する専門知識を持ちます。企業が使用するソフトウェアのカスタマイズやトラブルシューティングを担当することが多いです。
また、ユーザーのニーズに応じてアプリケーションをカスタマイズする能力や、新しいアプリケーションを導入する際の評価・選定能力も重要です。このような多角的なスキルが求められるため、一つのアプリケーションに限らず、関連する複数のソフトウェアに対する知識も必要とされます。
ソフトウェアデベロップメント
ソフトウェアデベロップメント職種では、ソフトウェア製品を開発する役割があります。プログラミングスキルはもちろん、ユーザーのニーズを理解し、それを製品に反映させる能力も重要です。
また、開発フレームワークやプログラミング言語の選定、テスト駆動開発やアジャイル開発などの開発手法にも精通している必要があります。
カスタマーサービス
カスタマーサービスでは、顧客からの問い合わせやクレーム対応を行います。ITスキルは、CRMシステムの操作やデータベースの管理に活用されます。
顧客情報の正確な管理や、問い合わせ履歴の追跡が可能なシステムを効率よく運用する能力が求められるでしょう。
ITサービスマネジメント
ITサービスマネジメントは、ITサービスの品質を管理し、ビジネス価値を最大化する役割を果たします。ITILなどのフレームワークを用いて、サービスの効率と品質を向上させることが主な業務です。
具体的には、サービスカタログの管理、インシデント管理、変更管理などがあります。これらの業務を通じて、ITサービスがビジネスに与える影響を最小限に抑え、最大の効果を発揮できるように管理します。
エデュケーション
エデュケーション職種では、スキル標準が対象とするプロフェッショナルを育成するための研修サービスを提供します。教育プログラムの設計や運営、評価などが主な業務です。
この職種では、教育内容が時代のニーズに応じて柔軟に変わるため、教育カリキュラムの常時更新と、その効果測定が求められます。また、オンライン教育プラットフォームの運用や、リモート研修の効果的な方法も研究し、実践する必要があります。
ITスキル標準(ITSS)を活用してIT人材育成を行おう
ITスキル標準(ITSS)は、高度なIT人材の育成を目的とした指標であり、経済産業省が策定し、情報処理推進機構(IPA)が管理しています。
この指標を活用することで、企業は従業員のスキルと知識の度合いを可視化し、共有することができます。さらに、ITSSは7段階のスキルレベルに分類されており、それぞれのレベルでスキルの習熟度や実績を評価できます。
ITSSを活用する主なメリットは以下の通りです。
目標 | 説明 |
---|---|
スキルの可視化 | 従業員一人ひとりのスキルレベルや専門分野を明確にする |
人材配置の最適化 | スキルレベルに応じて、最も適したプロジェクトや業務に従業員を配置する |
研修プログラムの効果的な設計 | スキルギャップを特定し、それに対応する研修プログラムを設計する |
企業がITSSを導入する際には、目的を明確にし、それを従業員に理解させることが重要です。理解が深まれば、スキルの研鑽や資格試験に力を入れやすくなります。
また、スキル管理ツールを活用することで、スキル情報の一元管理と更新が容易になります。
まとめ
IT人材のスキルマップには、ITスキル標準(ITSS)を活用することが重要です。ITSSは、高度なIT人材の育成を目的とした指標であり、経済産業省が策定し、情報処理推進機構(IPA)が管理しています。
ITSSを活用することで、企業は従業員のスキルと知識を可視化し、最適な人材配置や効果的な研修プログラムの設計が可能です。
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