IT人材育成における政府の役割と目標!人材が不足している理由とは?
更新日:2023年11月22日
現代社会において、情報技術(IT)はますます重要な役割を果たしています。そのため、政府はIT人材の育成を推奨し、IT産業の競争力を高め、経済成長を促進することを目指して取り組みを開始しました。しかし、現在の日本では、IT人材不足が深刻な問題となっており、その影響は企業や組織に大きな打撃を与えています。
このような状況を踏まえ、政府はさらに教育制度の改革や職業訓練の提供、研究開発の支援など、さまざまな施策を展開しています。本記事では、政府が推進するIT人材育成策と、企業が取るべき施策について詳しく解説します。
目次
そもそもIT人材とは?
IT人材とは、情報技術(IT)の分野で活躍する人材のことを指します。中小企業白書(2016年版)では、ITの活用や情報システムの導入を企画、推進、運用する人材と定義されています。
IT人材は企業や組織において、ITの活用や情報システムの導入を計画し、運用する重要な役割を果たします。その役割は多岐にわたり、システム開発やネットワーク管理、データ分析など、さまざまな分野で求められるでしょう。
しかし、IT人材の不足が深刻な問題となっており、独立行政法人情報処理推進機構が発表した「DX白書2021」によると、IT人材不足を抱える企業は全体の88.2%に上ると報告されています。
一方で、企業や組織は競争力を維持するためにITを活用し、効率化や新たなビジネスモデルの構築を進めています。そのため、IT人材の存在はますます重要となっているのです。
情報リテラシーが必要とされる理由
情報リテラシーとは、必要な情報を見つけ出し、正しく理解し、適切に利用する能力のことです。また、情報技術の変化に対応し、新しい技術を学び、自分の仕事や生活に活かす能力のことでもあります。
加えて、情報セキュリティや個人情報保護など、情報の安全性や倫理性に関する問題を回避し、情報を安全に管理する能力も求められるものです。そして、情報はコミュニケーションや協働の手段としても使われるため、情報を効果的に伝える能力や、他者の情報を尊重する態度も必要となるでしょう。
なお、総務省行政管理局の資料では、情報リテラシーが政府職員だけでなく、一般職員も含めてIT人材スキルを高める必要があるとして取り上げられています。そのため、情報リテラシーはどの業種の人も身に付ける必要があると言えます。
IT人材が不足している理由
IT人材が不足していることは、日本の経済や社会にとって深刻な問題です。IT人材は、情報通信技術(ICT)を活用して、さまざまな分野や産業のイノベーションを支えています。
しかし、IT人材の需要と供給のバランスは大きく崩れており、需要が供給を上回っています。具体的には、下記の理由が挙げられるでしょう。
- 急速なテクノロジーの進化
- 教育の不足
- グローバルな需要
- 多忙な労働環境
そこで、新たなIT人材の育成や採用を積極的に行っていく必要があります。
急速なテクノロジーの進化
IT人材が不足している理由の1つは、急速なテクノロジーの進化です。近年、AIやIoT、クラウドなどの先端技術が急速に発展し、さまざまな分野や産業でICTを活用する機会が増えています。
これにより、IT人材への需要は拡大しており、特に高度なスキルや知識を持つIT人材への需要は高まっています。一方で、日本では労働人口が減少しており、若年層や女性などの潜在的なIT人材も十分に活用されていません。
さらに、IT技術の進展によって、IT人材が求められるスキルや知識も変化しており、既存のIT人材も常に最新の技術を学ぶ必要があります。これらの要因が複合的に作用して、IT人材の不足を招いています。
教育の不足
IT人材が不足している理由のもう1つは、教育の不足です。IT人材の育成や採用には、IT人材を指導する人材が必要です。
しかし、ICT人材の育成には指導する人材が不足している問題や、人材育成に十分な時間が取れない課題が浮上しています。
さらに、指導や育成の方法やノウハウが不足していることも想定できるでしょう。加えて、総務省の調査によると、ICT人材の不足状況について、「大幅に不足している」または「やや不足している」という回答の合計が、89.0%にも達しています。
これらの結果から、IT人材の教育体制や環境が十分ではないことがわかります。
グローバルな需要
IT人材が不足している理由には、グローバルな需要も関係があります。IT業界は、成長産業であり、今後も伸びていく市場です。世界的に見ても、IT業界の市場規模は拡大しており、ITサービスやソフトウェアの需要が高まっています。
しかし、日本のIT人材は、英語力や異文化理解力などのグローバルなコミュニケーション能力が不足しているという課題があります。
また、日本のIT企業は、海外進出やグローバルな協業を積極的に行っているとは言えません。これらのことが、IT人材のグローバルな需要に応えられない原因となっています。
多忙な労働環境
IT人材の不足の最後の理由は、忙しい労働環境です。IT業界には「きつい」「厳しい」「帰れない」といった「3K」のイメージが強くあります。
実際、IT業界では、プロジェクトの納期や品質に対するプレッシャーが高く、残業や休日出勤もしばしばみられます。また、IT技術の変化に追従するためには、勉強や自己研鑽をしなければならず、プライベートの時間を割かなければいけない場面もあるでしょう。
このような忙しい労働環境は、IT人材の就職意欲や離職率にも影響を与えてしまいます。特に若年層や女性は、ワークライフバランスやキャリア形成を重視する傾向がありますが、IT業界ではそれらを実現するのが難しいと感じるかもしれません。
IT人材育成における政府の役割と目標
政府は、IT人材の育成において重要な役割を果たしています。その目的は、国内のIT産業の競争力を高め、経済成長を促進することです。
具体的には、以下の取り組みが考えられます。
施策 | 内容 |
---|---|
教育制度の改革 | 学校教育でITスキルを重視するカリキュラムを導入し、子供たちにITリテラシーを身につけさせる |
職業訓練の提供 | 失業者や再就職希望者にITスキルを身につけるための訓練プログラムを提供する |
研究開発の支援 | 研究開発への資金援助や税制優遇を行い、新たなIT技術の開発を促進する |
これらの取り組みにより、政府はIT人材の供給を増やし、IT産業の発展を支えることができます。また、これらの人材が社会全体のデジタル化を推進し、生活の質の向上にも貢献することが期待されています。
政府デジタル人材のスキル認定の基準
政府のデジタル人材のスキル認定には、いくつかの基準があり、それぞれが個々のスキルや経験に焦点を当てています。
基準 | 説明 |
---|---|
業務経験 | デジタル関連の業務に従事した経験があり、その内容と成果が評価される |
情報システム統一研修 | デジタル庁が提供する研修プログラムを修了していることが求められる。この研修は、デジタルスキルの基礎から応用までを網羅している |
各種資格 | スキル認定に必要な資格を保有している。これには、プログラミング、データ分析、プロジェクトマネジメントなど、多岐にわたる資格が含まれる |
さらに、経済産業省と情報処理推進機構(IPA)が策定した「デジタルスキル標準(DSS)」も参考にされます。
DSSは、DX(デジタルトランスフォーメーション)に関与するビジネスパーソンが持つべき知識とスキルを体系的にまとめたものです。このように、政府のデジタル人材のスキル認定は、多角的な評価に基づいて行われます。
政府が提示するIT人材の育成・確保の実施方法
政府が提示するIT人材の育成・確保の実施方法は、下記が挙げられます。
- IT投資に関する中長期ビジョンが必要になる
- 現状とのギャップを分析する
- 高度IT人材は外部からの任用・確保も必要になる
- 高度IT人材の相互啓発、ロールプレイの場を提供する
IT投資に関する中長期ビジョンが必要になる
政府機関や企業がデジタルトランスフォーメーションを進めるには、単なる短期的なIT投資では不十分です。中長期的なビジョンが必要とされます。このビジョンには、具体的な目標、期限、そしてそれを達成するために必要なIT人材のスキルセットが明確にされるべきです。
例えば、5年後には全ての業務をクラウド化する、といった明確な目標が設定されることで、必要なIT人材の資質も明確になります。また、このビジョンを達成するためには、現在のITシステムの評価や改善、新たなテクノロジーの導入など、さまざまな取り組みが必要です。
現状とのギャップを分析する
IT人材の確保と育成において、現状と必要なスキルとのギャップをしっかりと分析することが重要です。この分析によって、どのような研修が必要か、または新たにどのような人材を確保すべきかが明確になります。
例えば、AIの専門家が不足している場合、既存の人材に対するAI関連の研修を強化するか、外部から専門家を招聘する戦略が考えられます。さらに、現在のIT人材のスキルセットを広げるために、新たなトレーニングプログラムや専門コースを提供することも検討されるでしょう。
高度IT人材は外部からの任用・確保も必要になる
高度なIT人材については、内部育成だけでなく外部からの任用も有効な手段とされています。特に、高度な専門スキルを持つ人材や経験豊富なCIO補佐官クラスの人材は、外部から確保することで、組織内のデジタルトランスフォーメーションを加速させることが可能です。
さらに、外部からの人材採用によって、新たなアイデアや切り口を持った人材を組織に取り入れることができます。
高度IT人材の相互啓発、ロールプレイの場を提供する
高度なIT人材が多く集まる場を提供することで、相互のスキル向上や啓発が期待されます。具体的には、他の部署や他府省、さらには民間企業のIT人材とも交流する場を設けることが有効です。
これにより、異なる組織や業界の視点から問題解決ができるようになり、全体としてのIT人材の質が向上します。また、相互啓発のために、定期的なワークショップやロールプレイの機会を提供することも考えられます。
企業がすべきIT人材不足に対する施策
企業が直面するIT人材不足に対処するための一つの有効な手段は、外部の専門機関に依頼して人材を育成することです。この方法は、企業が自社での研修や教育プログラムをゼロから構築するよりも、時間とコストを大幅に削減できる場合が多いです。
外部の専門機関は、IT人材育成に特化したカリキュラムやプログラムを提供しており、即戦力となる人材を短期間で育て上げることが可能です。また、専門機関が持つ広範なネットワークを活用することで、企業は多様なスキルセットを持つ人材にアクセスできます。
このように、外部に依頼することで、企業はIT人材不足を効率的に解消し、ビジネスの成長を促進できます。
まとめ
IT人材の不足は、教育体制や環境の問題、グローバルな需要、多忙な労働環境が原因とされています。政府は、教育制度の改革や職業訓練の提供、研究開発の支援などを通じて、IT人材の育成に取り組んでいます。
また、政府デジタル人材のスキル認定基準も設けられていることも大きな特徴です。これらを考えると、企業は外部の専門機関に依頼してIT人材の育成を行うことで、人材不足に対処する必要があるでしょう。
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