AI人材はいらない?理由や経済産業省が行う人材不足の解決方法
更新日:2023年11月22日
AI技術が進化し、利用できるツールやプラットフォームが増えていく中で、2020年には4.4万人だったAI人材の需要は、その5年後には8.8万人に倍増し、2030年には12.4万人に達すると見込まれています。
しかし、こうした必要性が注目される一方で、AI人材は「いらない」という意見も存在します。例えば、AIに関するツールやプラットフォームの進化により、AI人材の需要は減少する可能性があるという意見などです。
では、実際にAI人材は「いらない」「やめとけ」と言われる状態なのでしょうか。本記事では、AI人材の需要と現状、その必要性について詳しく解説します。
この記事を読むことで、AI技術の進化とAI人材の役割について深く考え、今後のキャリアやビジネス展望に活かすことができるでしょう。
AI人材の重要性が注目されている一方で、AI人材はいらないという意見もある 。
目次
AI人材の必要性
AI人材の必要性は、今後もますます高まると考えられます。なぜなら、情報処理推進機構(IPA)の調査によると、2020年には4.4万人だったAI人材の需要は、その5年後には8.8万人に倍増し、2030年には12.4万人に達すると見込まれているためです。
例えば、総務省のDX白書2023によると、AI人材の不足は49.7%で最も高く、AIへの理解が不足していると感じる企業も45.5%に上っています。
また、経済産業省の調査によると、日本の企業の平均AI導入率は3%未満であり、検討企業も約15%にとどまっています。順調にAIの利活用が普及すると考えれば、AI人材の需要はさらに高まりをみせるでしょう。
参考:https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/gmcbt8000000botk-att/000108041.pdf
AI人材は「いらない」「やめとけ」と言われている理由
先述したように、AI人材の必要性はその高まりを見せています。しかし、AI人材は下記の理由で、「いらない」「やめとけ」という意見が挙がっています。
ツールやプラットフォームが進化しているため
AI人材が「いらない」「やめとけ」と言われる1つ目の理由が、AIに関するツールやプラットフォームが日々進化していることです。
例えば、GoogleのAutoMLやMicrosoftのAzure Machine Learningなどは、コードを書かずに機械学習モデルを作成できるサービスです。また、簡単にプログラムを作成したり、データを分析したりする機能まで備えていることもあります。
さらに、急速に広まった自然言語処理を利用したChatGPTを使うことで、難しいコードをゼロから生み出す必要もなくなってきました。
このように、進化したツールやプラットフォームを使えば、一定のエンジニア業務をAIが代行してくれると考えられます。その結果、需要が減ると予想されることから、AI人材は「いらない」「やめとけ」と意見が挙がっています。
高度な技術を求められるため
一方で、AI人材には高度な技術が求められるハードルの高さも「やめとけ」と言われる理由の1つです。AIに関するプログラミングスキルや機械学習・ディープラーニングの理論、統計学・数学の知識、データベースやクラウドの操作など、多岐にわたる専門知識やスキルが必要となります。
また、AIは多岐にわたる試行錯誤によって常に進化しており、最新の技術やトレンドに対応する能力も求められるでしょう。AI人材は、こうした技術的なハードルに加えて、最新情報をキャッチアップする能力が求められます。
このように、技術的なハードルが高く、習得するコストが大きいという理由で、AI人材は「やめとけ」と言われることもあります。
継続的な学習とスキルのアップデートが必要ため
さらに、AI人材には継続的な学習とスキルのアップデートが必要です。先ほども軽く触れたように、AIは市場環境や社会課題に応じて変化しており、新しいAIが登場したり、古いAIが廃れたりするリスクがあります。
そのため、AI人材は常に変化に対応しなければならず、自己啓発やキャリア開発に努力しなければなりません。このように、継続的な学習とスキルのアップデートが必要であるという理由で、AI人材は「やめとけ」と言われることもあります。
AI人材が不足している理由
AI人材が不足している理由は、大きく分けて以下の3つです。
- 専門知識やスキルが求められるため
- AI人材の獲得競争が激しいため
- 教育体制が追いついていないため
専門知識やスキルが求められるため
まず、人材不足の理由として挙げられるのが、以下の専門知識やスキルが求められるためです。
- プログラミングスキル
- 数学的な知識・考え方
- 統計解析・分析手法
- 現場の理解と課題の特定スキル
- ハードウェアを含めた現場の変革推進スキル
- 事業の状況に柔軟に対応できるスキル
しかし、昨今のAI人材を取り巻く学校・社内教育などの環境は、いまだに十分とは言い切れません。そのため、自主的に学習したり、実践したりする必要があります。
また、AI分野は日々進化しており、常に最新の技術やトレンドに対応できるようにアップデートしていくことも求められます。このように、高度な専門知識やスキルが必要ですが、主体的に実現できるAI人材は少ないでしょう。
AI人材の獲得競争が激しいため
2つ目の理由として、AI人材の獲得競争が激しいことも考えられます。AI技術を社内に取り入れるため、人材を獲得しようとする企業や組織が動きだすためです。
即戦力として現場で活躍できるAI人材は、人材不足の昨今では貴重な存在です。そのため、資本力があり競争に優位な大手テクノロジー企業や研究機関は、高額な給与や待遇を提示したり、興味深いプロジェクトやチームを提供したりして、AI人材を引き寄せます。
一方で、中小企業や公共機関などは魅力的なオファーを出せなかったり、知名度やブランド力が低かったりして、AI人材の獲得に苦慮するでしょう。こうしたAI人材の獲得競争の激化によって、AI人材の不足を招いていると考えられます。
教育体制が追いついていないため
最後に、急速にAI技術が進化する昨今において、教育体制が追いついていないことも理由として挙げられます。
例えば、社内教育ではAIに関する研修やセミナーが不規則だったり、内容が陳腐化していたりすることなどが挙げられます。また、実案件で経験を積んでいくことが難しいことも課題です。
AIプロジェクトは、高度な技術や専門性を要します。そのため、初心者や未経験者は、率先して参加できる機会をなかなか得られません。
こうしたAI人材を取りまく教育体制が不十分であることも、人材不足を招く理由として考えられます。
AI人材の不足を解決するためには?経済産業省の取り組みなど
AI人材の不足を解決するためには、すでに社内で活躍している社員に対する教育に力を入れることが大切です。人材不足が嘆かれている現状を受け、経済産業省も以下の取り組みをスタートさせています。
それぞれ詳しく紹介するため、ぜひ育成に動き出してみてください。
- 必要な実務能力の明確化・体系化(ITスキル標準)
- 第四次産業革命スキル習得講座認定制度
- デジタル人材育成プラットフォーム
必要な実務能力の明確化・体系化(ITスキル標準)
ここまで、何度かAI分野は日々進化しており、一般的なスキルや知識だけでは対応できないことをお伝えしました。これを受けて経済産業省は、ITスキル標準という制度を導入しました。ITスキル標準とは、「ITスキル標準(ITSS)」は、IT領域で活躍するための実務能力を具現化し、整理する枠組みのことです。
ITスキル標準では、AI分野における6つの職種(AIエンジニア、データサイエンティスト、データエンジニア、データアナリスト、ビジネスアナリスト、プロジェクトマネージャー)とそれぞれのレベル(初級・中級・上級)について、詳細なスキルマップが公開されています。
そのため、必要な実務能力の明確化・体系化が実施されたことで、AI人材の育成や評価において、客観的な基準として利用できるでしょう。また、情報処理推進機構(IPA)も定期的にこの標準を見直し、最新の技術動向に合わせてアップデートしています。
第四次産業革命スキル習得講座認定制度
また、AI人材の育成に対して経済産業省は、第四次産業革命スキル習得講座認定制度という制度も導入しています。
第四次産業革命スキル習得講座認定制度とは、AIやIoTなどの第四次産業革命に関連する技術や知識を学ぶことができる講座に対して、経済産業省が認定する制度です。
認定された講座は、ITスキル標準に基づいてカリキュラムや教材が作成されており、受講者に対しては修了証が発行されます。これにより、AI人材の育成や就職・転職において、信頼性や効果性が高まります。
デジタル人材育成プラットフォーム
経済産業省のデジタル人材育成プラットフォームでは、マナビDXとマナビDX Questという2つのサービスが提供されています。
まず、マナビDXは経済産業省とIPAが立ち上げたプラットフォームで、デジタルリテラシーの向上を図ることを目的としています。プラットフォームでは、デジタルスキルの初学者から経験者まで、多くの人々に実践的な学習の機会を提供しています。
次に、マナビDX Questは、実際の企業データを利用したケーススタディや地域企業と連携したオンライン研修を通じて、デジタル技術を活用する人材を育成するプログラムのことです。
プログラムは、ビジネスの現場で直面する課題を解決する能力を育み、地域企業のデジタル変革を支援することを目指しています。マナビDX Questは2つのフェーズで構成され、参加者はまず理論を学び、次に現地の中小企業と連携して実際のプロジェクトに取り組みます。
AI人材になるには?
AI人材になるには、以下に挙げた3つのポイントを押さえましょう。
- 実務経験を積む
- 継続的に学習していく
- 資格を取る
実務経験を積む
AI人材になるには、実際のプロジェクトや業務でAIを使った問題解決や開発を行うことが大切です。
実務経験を積むことで、AIの応用範囲や可能性、制約や課題などを理解できます。また、チームワークやコミュニケーション、プレゼンテーションなどのスキルも身につけることができます。
実務経験を積むためには、自分の興味や関心のある分野や業界でAIを活用している企業や組織に参加することがおすすめです。なお、研修でも実務経験に近い内容を取り入れていることもあります。
継続的に学習していく
次に、AI人材になるには、継続的に学習していくことが必要です。AIは日々進化しており、新しい技術や手法、ツールやプラットフォームが登場しています。
そのため、常に最新の知識やスキルをキャッチアップすることが求められます。継続的に学習していくためには、オンラインコースや書籍、ブログや動画などの教材を活用することが有効です。
また、コミュニティや勉強会などに参加して、他のAI人材と交流したり、フィードバックを得たりする方法も良いでしょう。
資格を取る
最後に、AI人材を目指すと決めた際には、資格を取ることも有効な手段です。資格を取ることで、自分の知識やスキルのレベルを客観的に証明できます。
AI人材に関連する資格は多数ありますが、代表的なのは以下の通りです。
- AIエンジニア検定
- 機械学習エンジニア認定試験
- ディープラーニングエンジニア認定試験
- ビッグデータ分析技術者認定試験
- データサイエンティスト認定試験
こうした資格を取得するまでの過程で、AIの基礎から応用まで幅広く学ぶこともできます。加えて、就職や転職、昇進などのキャリアアップのチャンスも広がるでしょう。
まとめ
AI人材の必要性についての議論は続いていますが、経済産業省や情報処理推進機構の調査などからも、AI人材の需要は増加すると予測されています。現状、AI技術の進化により、一部のエンジニア業務はAIが代行できますが、AI人材の役割や高度な専門知識の必要性は依然として存在します。
そのため、AI人材を確保するために採用・社員の育成を進める必要があるでしょう。ディジタルグロースアカデミアでは、AI人材育成に特化した研修を提供しています。
AI人材になるためには、知識だけでなく実践力も必要です。ディジタルグロースアカデミアの研修で、AI人材としての自信と能力を高めましょう。
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