Columnコラム

経済産業省のDX戦略とは?具体的な取り組みや補助金についても紹介

更新日:2023年12月19日

経済産業省は、DXの推進を強く推奨しています。その主な理由は、2025年に予想される経済的損失、いわゆる「2025年の崖」問題の回避です。

「2025年の崖」は、既存システムのブラックボックス化や複雑化が改善されない場合、2025年以降、経済的損失が大きくなるという問題です。問題の解決のため、DXによって業務効率化、多様な働き方の実現、競争力の強化が期待されています。

この記事では、経済産業省が実施するDXについて焦点を当てて、その施策や具体的な体系化について解説します。ぜひ、DXの推進をスムーズに進める参考にしてください。

目次

    経済産業省のDX戦略とは

    経済産業省のDX戦略とは、産業界のDXを推進するために、展開しているさまざまな施策のことです。戦略としてまとめられたDX推進のための施策やレポートは、すべての事業者、上場企業、中堅・中小企業などに対して多岐にわたっています。

    経済産業省が提示するDX戦略のなかには、企業がDXを推進する上での指針を指し示す「デジタルガバナンス・コード」、DX認定制度、DX推進指標、DXレポート、DX白書などが含まれています。

    ここからは、施策のなかでも、体系化に関する「DX推進施策」について詳しく見ていきましょう。

    DX推進施策の体系化

    経済産業省は、産業界のDXを推進するために、以下の3つのレベルに分けて施策を体系化しています。

    1. DX-Excellentレベル(DX銘柄・DXセレクション企業)
    2. DX-Readyレベル(DX認定企業)
    3. DX-Ready以前レベル
    DX-Excellentレベル(DX銘柄・DXセレクション企業)

    DX-Excellentレベル(DX銘柄・DXセレクション企業)は、デジタルガバナンス・コードに沿って、特に優良な取組を実施している企業を指します。各業種や地域において、他の企業の模範となるような企業がこのレベルに該当します。

    具体的には、ITを積極的に利用して経営革新を行い、企業価値の向上を目指す上場企業がDX銘柄として指定されます。また、中小企業の中で優れたDX実践事例を集め、模範的なケースとして選定・紹介されるDXセレクションという取り組みも同様です。

    DX-Excellentレベルの企業は、デジタル技術を戦略的に活用して競争力やイノベーション力を高めていると言えるでしょう。

    DX-Readyレベル(DX認定企業)

    次に、DX-Readyレベル(DX認定企業)は、デジタルガバナンス・コードに沿って、基本的な取組を実施している企業です。これからDXに取り組んでいく体制が整備できた、という時点の企業がこのレベルに該当するでしょう。

    具体的には、「デジタルガバナンス・コード」に沿ってデジタル技術の効果的な利用を進める企業を国が認定するDX認定制度があります。

    同制度では、約80%の認定事業者がDX戦略の推進に効果があったと回答しており、中小企業等の認定事業者数は約2.6倍に増加しています。このように、DX-Readyレベルの企業は、デジタル技術を基盤としてビジネスプロセスやサービスを改善している状態です。

    DX-Ready以前レベル

    最後に、DX-Ready以前レベルは、DX-Excellentレベル(DX銘柄・DXセレクション企業)、DX-Readyレベル(DX認定企業)に該当しない企業を指します。その多くが、デジタル戦略の開発中で、「デジタルガバナンス・コード」に完全に準拠していない状態です。

    DX-Ready以前レベルの企業は、デジタル変革の初期段階にあることから、多くの取り組みが必要と言えるでしょう。

    経済産業省の具体的な取り組みとプロジェクト

    経済産業省は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に向けて複数の施策を展開しています。また、各地域における取り組みとして、北海道、東北、中部、近畿、九州の経済産業局を通じて、DX推進のための様々な活動も行われています。

    ここからは、経済産業省の具体的な取り組みとプロジェクトを以下に分けて見ていきましょう。

    • DX推進指標
    • DX認定制度
    • 「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き(中堅・中小企業等向け)
    • DXセレクション
    • デジタル人材育成プラットフォーム
    • デジタルスキル標準(DSS)

    DX推進指標

    経済産業省のDX推進指標は、デジタル変革の進捗を測定するために策定されました。DX推進指標は、デジタルガバナンス・コードの13の行動原則を踏まえて、以下の5つの観点から構成されています。

    • 経営戦略とデジタル戦略の一体化
    • データとデジタル技術を活用した変革
    • ガバナンス・リスク・コンプライアンスの強化
    • 人材の育成・確保
    • 国際展開

    そのため、経営のあり方や、ITシステム構築の枠組みを含む複数の項目で構成されています。そのため、企業は自己診断を通じて自社のDX状況を評価できます。

    また、毎年9月と10月には集中的な診断が行われ、情報処理推進機構(IPA)によるベンチマーク提供も実施されています。同指標を活用して、分析結果を利用することで、企業は自社と他社との差を理解し、改善策を講じることが可能です。

    DX認定制度

    また、経済産業省は、デジタルガバナンス・コードの13の行動原則を、ある程度以上実施している企業を認定するDX認定制度を創設しました。DX認定制度は、企業のDXの推進状況を客観的に評価し、DXを推進する企業へのインセンティブとして活用されています。

    実際、多くの企業が制度を通じて、約80%の事業者がDX戦略の推進に効果を実感しており、中小企業の参加も増加しています。なお、認定された事業者は金融支援や税制優遇、人材育成の助成金など様々な支援を受けることが可能です。

    「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き(中堅・中小企業等向け)

    「デジタルガバナンス・コード」実践の手引きは、中堅・中小企業のDX推進をサポートする重要な資料です。手引きは、中堅・中小企業等が、デジタルガバナンス・コードの13の行動原則を理解し、自社のDXに取り組むためのガイドラインとして活用されています。

    最近では「デジタルガバナンス・コード2.0」への改訂が行われ、それに基づく手引きも更新されました。デジタルガバナンス・コードによる取り組みは、中堅・中小企業がデジタル時代の要請に対応し、より効果的な経営改革を行うための基盤を提供していると言えるでしょう。

    DXセレクション

    他にも、経済産業省は、DXを推進する上で、優れた取り組みを行う企業を、DXセレクションという制度で選定しています。取り組みは、地域や業種内でのデジタルトランスフォーメーションの推進と活性化を目的としています。

    DXセレクションの対象となる企業は、デジタルガバナンス・コードの13の行動原則を十分に実施しており、DXを推進する上で、優れた取り組みを行っている企業です。成功事例の共有により、他の企業もこれらの事例から学び、自社のDX推進に活用することが期待されています。

    デジタル人材育成プラットフォーム

    加えて、経済産業省は、デジタル人材の育成を支援するために、デジタル人材育成プラットフォームを整備しています。

    「マナビDX(デラックス)」と「マナビDX Quest」を含むこのプラットフォームは、オンライン講座の紹介から、企業データを活用したケーススタディ教育、地域中小企業との協働プログラムまで、多様な教育コンテンツを提供しているものです。

    プラットフォームは、デジタル人材の育成に必要な情報やサービスを一元的に提供することで、企業や個人が、デジタル人材を効率的に育成できるように支援しています。

    デジタルスキル標準(DSS)

    「デジタルスキル標準(DSS)」は、DX関連の知識とスキルを定義する基準です。DSSは、全てのビジネスパーソンが身につけるべきとされている「DXリテラシー標準」とDX推進を専門とする人材向けの「DX推進スキル標準」の2種類に分かれています。

    いずれにおいても、デジタル人材に求められるスキルを体系的に整理したものであり、企業や個人が、デジタル人材の育成に必要なスキルを明確にするための指針として活用されています。また、2023年8月には、進化する技術環境を反映して改訂が行われました。

    経済産業省のIT導入補助金とは

    補助金名 IT導入補助金
    対象者 中小企業(飲食、宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護、保育等のサービス業の他、製造業や建設業等も対象)
    補助対象経費 ITツール導入にかかる経費
    補助率 2分の1(最大450万円)、その他枠によって異なる
    申請方法 IT導入支援事業者を通じて申請
    主な対象経費 ソフトウェア、ハードウェア、クラウドサービス、保守・運用費、導入支援費
    主な対象ITツール 業務効率化、生産性向上、経営改善、データ利活用等に資するITツール

    引用:https://it-shien.smrj.go.jp/about

    経済産業省のIT導入補助金は、ITツール(ソフトウェア、サービスなど)導入を支援する補助金です。中小企業や小規模事業者の労働生産性を向上させる目的で、業務効率化やDXのためのITツールも対象となります。

    IT導入補助金の通常枠には、A類型とB類型があります。

    • A類型は補助率1/2以内で、補助額が5万円以上150万円未満
    • B類型は補助率1/2以内で、補助額は150万円以上450万円以下

    また、対象となるITツールは事務局による事前審査を受け、補助金の公式ウェブサイトに公開(登録)されたものに限られます。補助金には、相談対応やクラウドサービス利用料などのサポート費用も補助対象に含まれます。

    補助金申請者は、IT導入補助金事務局に登録されたIT導入支援事業者とパートナーシップを組み、申請する必要がある点に注意しましょう。

    まとめ

    経済産業省のDX関連施策は、中小企業や地域別のニーズに応じて多岐にわたります。具体的にはDX認定制度、デジタルガバナンス・コードの実践手引き、DXセレクション、デジタルスキル標準(DSS)、デジタル人材育成プラットフォームが含まれます。

    それぞれの施策を活用することで、DXを推進できるデジタル人材の育成を進めましょう。ディジタルグロースアカデミアは、これらの施策に準拠したデジタル人材育成サービスを提供しており、企業のDX推進に貢献しています。ぜひ、チェックしてみてください。

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