【事例あり】DX人材育成の5つの課題を解決する7つのステップを徹底解説!
- 公開日:2024年11月11日

企業の成長戦略としてDXの重要性が高まる中、多くの企業が「DX人材の育成」という共通の壁に直面しています。
「DXを推進しろと言われても、どこから始めればいいのか分からない」「研修を実施しても、成果が見えにくい」――そんな悩みを抱える担当者の方も少なくありません。
本記事では、DX人材育成でつまずきやすいポイントを整理し、その課題を乗り越えるための7つのステップを、実際の成功事例とともにご紹介します。
目次
DX人材育成がうまくいかない理由
DX人材育成がうまくいかない理由として、生成AIやノーコードツール、RPA、SaaSなどのデジタルツールの導入は進んでいるものの、それらを効果的に活用するために必要な知識・情報・スキル、そして人材が不足していることが挙げられます。
その結果、DX推進の成果が十分に得られず、デジタルツールの活用が社内に定着しない状況が生じています。
DX人材に必要なスキル

DX人材に求められる主なスキルを7つ紹介します。
自社の事業に関する理解
DXに関する知識に優れていても、自社の事業に対する理解が低いと、DXの知識を活かしきれません。
自社の事業を理解しているつもりでも、部署での役割を理解しているだけで、事業全体について理解しきれていない可能性があります。
DXの知識を最大限に活かすには、自社の事業に関する知識と会社の長所と短所など、会社全体の特徴についても理解しておくといいでしょう。
新規事業の企画立案能力
DX化には、新たなビジネスモデルの創出も含まれます。そのため、DX人材には、自社の事業に関する知識に加えて、市場や同業他社の動向などを分析した上で、新規事業に関する企画立案能力が求められます。
このスキルは、企業の成長戦略にとって、非常に重要なスキルです。
プロジェクトのマネジメントスキル
効率的にDX化を推進させるには、プロジェクトのマネジメントスキルが必要です。期日や予算、人員の管理能力、関係者との良好な関係を構築するコミュニケーションスキル、チームをけん引するリーダーシップなど、プロジェクトのマネジメントスキルは、複数のスキルの集合体と言えます。
ITに関する知識
ITに関する知識は、DX人材にとって基本的なスキルです。
アプリケーションやネットワーク、セキュリティなどの知識があることで、ITを活用して「何が可能であるか」を判断でき、トラブル発生時にも適切な対応ができます。
また、DX化には新たなデジタル技術の導入が必須とは限りません。既存のシステムで対応可能かどうかの判断も求められます。そのため、DX人材にとって、ITの知識は欠かせない知識と言えます。
データに関する知識
DXはアナログデータをデジタル化し、蓄積されたデータを基にさまざまな意思決定を行うため、DX人材にはデータベースやデータ分析などを含め、データに関する知識が不可欠です。
効果的な事業戦略を立案するには、データベースの活用が重要です。データベースの最適な活用法と、適切なデータ分析が行えるよう、データに関する知識を身につけましょう。
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AIや機械学習などの知識
AIや機械学習などの知識は、業務の効率化やイノベーションの促進、競争力の強化に不可欠です。また、IoTやブロックチェーンなどの先端技術も急速に発展を続けており、今後の主流技術となる可能性が高いため、継続的な学習が求められます。
DX人材には、これらの技術に関する知識と、学び続ける意欲が求められます。
UIやUXに関する知識
UI(ユーザーインターフェース)とUX(ユーザーエクスペリエンス)に関する知識もDX人材には必要です。UIは製品やサービスを通じた顧客との接点で、操作性に影響します。対して、UXは顧客が得る体験という意味で、満足度に直結します。
作り手の視点も重要ですが、顧客のニーズに応えるには、顧客の視点で見ることが不可欠です。視覚的な魅力と機能美を備えた、顧客満足度の高い製品やサービスを提供するには、UIとUXの知識が必要です。
DX人材育成で直面しがちな5つの課題

多くの企業がDX人材育成の重要性を認識しながらも、実際には様々な壁にぶつかっています。ここでは、よくある5つの課題とその背景について解説します。
課題1:育成すべき人材像が定義できない
最も根本的な課題は、「自社にとって必要なDX人材とはどのような人物か」が明確になっていないことです。DXの目的が曖昧なままでは、育成すべきスキルセットやキャリアパスも描けず、育成施策が場当たり的なものになってしまいます。結果として、育成した人材が活躍する場がなく、宝の持ち腐れとなってしまうのです。
課題2:社員が主体的に学習に取り組んでくれない
企業が研修の機会を提供しても、社員が「やらされ仕事」と感じてしまい、主体的に学んでくれないという課題も多く聞かれます。DXの重要性が自分自身の業務やキャリアと結びついていない、あるいは日々の業務が多忙で学習時間を確保できないといったことが原因として考えられます。
課題3:研修が実務の成果に結びつかない
座学やeラーニングで知識をインプットするだけで、実践の機会がなければスキルは定着しません。 研修で学んだことを実際の業務で活かす場がなかったり、上司や周囲の理解が得られず新しい手法を試せなかったりすると、せっかくの学びが成果に繋がらず、育成の効果を実感できません。
課題4:育成の成果を測る指標がない
DX人材育成は長期的な取り組みであり、その成果はすぐには見えにくいものです。育成の進捗や効果を測るための客観的な指標(KPI)が設定されていないと、施策の有効性を評価できず、改善に繋がりません。また、経営層に対して育成の投資対効果を説明することも困難になります。
課題5:経営層や現場の協力が得られない
DXは全社的な変革であるため、経営層の強いコミットメントと、現場の従業員の協力が不可欠です。しかし、育成担当部署だけが孤軍奮闘し、経営層からの十分な支援(予算や権限移譲など)や、現場からの理解が得られていないケースは少なくありません。特に、既存の業務プロセス変更に抵抗を示す声が上がると、DX推進は停滞してしまいます。
DX人材育成を成功に導く7つのステップ

前述の課題を乗り越え、DX人材育成を成功させるためには、戦略的かつ体系的なアプローチが必要です。ここでは、そのための具体的な7つのステップを紹介します。
ステップ1:DX戦略と目的を明確にする
最初に行うべきは、会社としてDXによって何を実現したいのか、その目的とビジョンを明確にすることです。「新規事業を創出する」「顧客体験を向上させる」「業務効率を抜本的に改善する」など、具体的なゴールを設定します。この目的が、人材育成全体の羅針盤となります。
ステップ2:必要な人材像とスキルを定義する
DXの目的が明確になったら、その目的を達成するためにどのような役割の人材が何人必要なのか、人材像(ペルソナ)とスキル要件を定義します。前述の「DX推進スキル標準」の5つの人材類型などを参考に、自社独自の要件を具体化していきます。
ステップ3:現状の人材スキルを可視化する
次に、従業員が現在どのようなスキルを持っているのかを客観的に把握します。スキルマップやアセスメントツールなどを活用して、定義した人材像とのギャップを可視化します。このギャップこそが、育成計画で埋めるべき課題となります。
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ステップ4:育成対象者を選抜する
全社員を一律に育成するのではなく、まずはDX推進の核となるメンバーを選抜することが効果的です。スキルアセスメントの結果に加え、変革への意欲やリーダーシップといったポテンシャルも考慮して、部署や年次にとらわれず幅広い層から候補者を選出します。
ステップ5:育成計画を策定し実行する
誰に、何を、どのように学んでもらうのか、具体的な育成計画(ロードマップ)を策定します。eラーニングによる基礎知識の習得、集合研修での専門スキル学習、OJTによる実践力強化など、複数の手法を組み合わせた育成プログラムを設計し、実行に移します。
| 育成フェーズ | 学習内容 | 主な手法 |
|---|---|---|
| 導入期 | DXリテラシー、マインドセット醸成 | eラーニング、セミナー |
| 育成期 | 専門スキル、データ分析、ツール活用 | 集合研修、ワークショップ |
| 実践期 | 課題解決、プロジェクト推進 | OJT、実践プロジェクト |
ステップ6:実践の場を提供し経験を積ませる
育成で最も重要なのが、学んだ知識を実践する場を提供することです。 まずは部署内の小さな業務改善など、スモールスタートで成功体験を積ませることが有効です。小さな成功を積み重ねることで、本人の自信に繋がるだけでなく、周囲のDXへの理解や協力も得やすくなります。
ステップ7:生成AIを活用し学習と実践を加速させる
これからのDX人材育成において、生成AIの活用は欠かせない要素です。生成AIを業務効率化の強力なサポーターや実践のアシスタントとして活用することで、育成のスピードと質を飛躍的に向上させることができます。
たとえば以下のような業務効率化の活用が考えられます。
- 資料作成の自動化:報告書・提案書・プレゼン資料などのドラフトをAIに生成させ、担当者は内容のブラッシュアップに集中できる。
- データ分析の補助:ExcelやBIツールのデータをAIに要約・解釈させ、意思決定のスピードを上げる。
- 業務フロー改善の提案:日々の業務ログや会議記録をAIが分析し、ボトルネックや改善策を提示する。
- コミュニケーション支援:社内外向けのメール文、議事録、チャット応答のたたき台をAIが自動生成することで、作業時間を削減。
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~4つの注意点と導入の3ステップで成功に導く~ 生成AI導入を成功に導く10の業務効率化事例と3つのステップを紹介。よくある使い方にとどまらず“一歩先の活用”を提案。失敗しないための4つの注意点もポジティブに解説します。
DX人材育成の具体的な解決策とポイント

DX人材育成のステップを理解した上で、各ステップで直面する具体的な課題に対して、どのような解決策を講じれば良いのでしょうか。ここでは、育成を成功に導くための具体的なポイントを解説します。
座学と実践(OJT)を組み合わせる
「研修で学んだが実務に活かせない」という課題を解決するためには、インプットとアウトプットのサイクルを回すことが不可欠です。座学で得た知識を、実際の業務の中で使ってみる機会(OJT)を提供します。例えば、データ分析の研修を受けた後、自部署の売上データを分析してみる、といった小さな実践を促すことが重要です。この繰り返しによって、知識は初めて実践的なスキルへと昇華されます。
スモールステップで成功体験を積ませる
いきなり大規模なDXプロジェクトを任されても、経験の浅い人材には荷が重く、失敗のリスクも高まります。まずは、RPAを導入して定型業務を自動化するなど、小規模で成果が出やすいプロジェクトから担当させることが有効です。小さな成功体験は、本人のモチベーションを高めるだけでなく、「DXは自分たちの業務にも役立つ」という認識を社内に広める効果もあります。
外部リソースを効果的に活用する
社内だけでは育成が難しい高度な専門スキルについては、外部の研修サービスやセミナーなど外部リソースを積極的に活用しましょう。AIやクラウド、セキュリティといった専門分野のプロフェッショナルから最新の知識や技術を学ぶことで、育成のスピードと質を高めることができます。
ディジタルグロースアカデミアでは、DXの知識と経験を持つコンサルタントが、クライアントの事業内容や課題に合わせて最適な施策設計と伴走サポートを行っており、「現場で実践できるDX人材の育成」を重視した支援が特徴です。
一例として、センコーグループホールディングス様は、“小さくても学んだことを実践する”というコンセプトのもと、研修を通じて投資対効果を創出。意識づけからデジタル技術の習得、変革手法の実践まで、一気通貫でご支援した事例となっています。

育成の先の“成果”を現場が一丸となって生み出す─
センコーユニバーシティの実践型DXワークショップ
センコーグループホールディングス様
生成AIの活用を促す
DX人材を補い、業務効率化の切り札として、多くの企業が生成AIツールを導入しています。しかし、高機能なツールを導入したものの、一部の社員しか使っていなかったり、期待したほどの成果に繋がっていなかったりするケースが少なくありません。これは、ツールを導入すること自体が目的となってしまい、「どのように業務に活かすか」という具体的な活用方法が社内に浸透していないことが原因です。
生成AIの活用を定着させるためには、各部署の業務に即した具体的な活用事例(ユースケース)や、効果的なプロンプトのテンプレートを共有し、「自分たちの仕事でもこのように使えるのか」という気づきを促すことが重要となります。ツールはあくまで手段であり、それを使いこなして新たな価値を生み出す文化を醸成することが、DX人材育成の観点からも求められます。
DX人材育成の成功事例
多くの企業が試行錯誤しながらDX人材育成に取り組んでいます。ここでは、特徴的な取り組みで成果を上げている事例を紹介します。
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【日清食品ホールディングス】生成AI活用による業務革新とDX人材育成
日清食品ホールディングスは、「DIGITIZE YOUR ARMS(デジタルを武装せよ)」をスローガンに、全従業員のデジタルスキル向上を目指しています。特に、社内向け生成AIツール「NISSIN AI-chat」を導入しただけではなく、企画立案や業務プロセス改善などに活用することで業務効率化を実現しています。
また、営業現場ではAIを発想の壁打ち相手として活用し、企画の質とスピードを向上させています。
さらに、社内教育プログラム「NISSIN DIGITAL ACADEMY」により、AIの効果的な活用スキルを体系的に学べる環境を整備し、ツールの導入だけでなく、実際の業務で活用することでAIが定着し、社員一人ひとりが自らデジタルを使いこなす文化を醸成しています。
- 日清食品グループ ─ 「デジタルを武装せよ」をスローガンに 全社でデジタル技術を活用した“業務改 革”を推進
【ダイキン工業】DXを担うAI人材を自社育成する取り組み
ダイキン工業は、社内大学「ダイキン情報技術大学(DICT)」を通じてAI人材を体系的に育成し、製造現場の業務効率化を実現しています。育成した人材は、データ分析や画像認識技術を活用し、生産ラインの遅延要因を可視化・予測する仕組みを開発。これにより、作業ロスを大幅に削減しました。また、AIツールの導入にとどまらず、実際の現場での活用と成果共有を通じて定着を図る体制を整備。人材育成と業務改善を両輪で推進することで、AIが日常業務に根づく企業文化を形成しています。
- ダイキン工業株式会社 ─ デジタル時代における製造業の変革~ダイキン情報技術大学におけるAI人材の育成と卒業生の活躍~
まとめ

2030年にはIT人材が79万人不足すると予測されており、DX人材も同様の不足が見込まれています。DX推進にはDX人材の確保が急務ですが、容易ではありません。
コンサルタントなどの外部サービスの活用や、社内の人材育成といった対策が必要です。
ディジタルグロースアカデミアでは、DX推進に必要な知識と経験を持つコンサルタントが伴走支援を行っています。
コンサルティングの他に、年間100社以上の企業が利用する研修やeラーニングなど、幅広いサービスを提供しています。
DXに関するお悩みがあれば、ディジタルグロースアカデミアにご相談ください。

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