Case Studyお客様事例

グループ全従業員5万人向け、金融デジタルへの挑戦

三井住友フィナンシャルグループ様

(左から二番目) 松尾 翔様 三井住友フィナンシャルグループIT企画部兼三井住友銀行システム統括部
(左から一番目) 内山 春菜様 三井住友フィナンシャルグループIT企画部兼三井住友銀行システム統括部
(右から二番目) 大平 祐輔 株式会社チェンジ デジタル人材育成事業部門
(右から一番目) 大庭 奈波 株式会社チェンジ デジタル人材育成事業部門

SMBCグループ様では、2020年7月-2021年1月にかけてグループ全従業員5万人向けのデジタル教育コンテンツの企画・開発を行いました。SMBCグループ様は、これまでも先進的なITと金融ノウハウを融合し、先進的なデジタルの取り組みをされてきました。今回は、SMBCグループのデジタル人材育成を担う松尾様、内山様に、開発に至った経緯や従業員とその先にいるお客さまへの思いについて、弊社の大平と大庭がお話を伺いました。

お客さまの課題解決や新しい価値提供に繋がる
デジタル教育に取り組む

SMBCグループのデジタル人材育成組織であるデジタルユニバーシティの設立の目的や活動内容について教えてください。

松尾様:
デジタルユニバーシティは、SMBCグループ共通のデジタルIT専門教育組織です。SMBCグループでは以前からデジタル・IT活用に積極的に取り組んでいました。SMBCグループ内に日本総合研究所というグループIT会社もあり、プロジェクトの実例から得られた開発や要件定義のノウハウを教育に活かすため、デジタルユニバーシティというIT専担部署向けの教育組織を2016年に立ち上げたのが始まりです。時代がどんどん変わって、IT専担部署だけでなく、SMBCグループ全従業員がITの基礎リテラシーやデジタル技術をいろんな形に活かし価値を高めていくことができるよう、徐々に全従業員に対しても教育をするよう教育スコープを拡大してきました。

従来の全従業員に対する教育内容はどのようなものでしょうか?

松尾様:
デジタルユニバーシティでは“コンピュータ/セキュリティの基礎知識”や”AI、ブロックチェーンなどのホットワード概説”あるいは”SMBCグループでの活用事例紹介”といった基礎内容に加え、親子で学ぶプログラミング的思考教室やラジオ番組の配信など多種多様なアプローチも試行してきましたが、どちらかというと知識を身につけるリテラシー教育が多かったかもしれません。

当初の全従業員への教育の成果はいかがでしたでしょうか?

松尾様:
リテラシー中心の内容で進めてきて、従来のIT企画開発においては有効な取組でした。他方、デジタル時代においてはキーワードや専門用語だけでなく、お客さまの課題解決や新しい価値提供に向けて高度化の必要性は感じていました。もう少し考え方を変えて、現場に根ざした教育、お客さまを見据えた教育に取り組みたいと考えていました。

そのような課題に基づいて、改めて今回のプログラムの検討に至ったのですね。

松尾様:
そうですね。世間ではデジタル人材育成と題して、デジタル専担組織の育成に取り組んでいる企業も多くあると思いますが、SMBCグループではそれだけでなく、「ITは少し敷居が高い」、「技術の話はちょっと苦手」といった方々含めた全従業員に向けたデジタル教育というものを本気でやっていきたいと考えていました。例えば、社内業務のデジタル活用による生産性向上、顧客接点・営業活動のデジタル活用によるリレーション強化、さらにはお客さまのデジタルニーズの喚起やデジタルソリューション提案の手法、デジタルビジネスを共創する具体的な方法などを学べるデジタル変革のためのプログラムです。そして、全従業員の教育を通して、お客さまのデジタル変革を支え、社会課題を解決する、そんな真のソリューションプロバイダーになることを全社一体で目指したいと考えました。

今回のプログラムを企画される中で、チェンジをパートナーとして選定いただいた経緯をお教えください。

松尾様:
我々の“お客さま”のことをしっかりと見て頂いたのがきっかけです。SMBCグループとしては、まず我々のお客さまや、お客さまのお客さまに対して、どのようにして課題解決の支援、あるいは新たな価値提供ができるかを熟慮した上で、現場へどういった教育をするべきなのかを考えたいと強く思っていました。チェンジさんの他にも様々な魅力あるご提案をいただいておりましたが、「採用・育成プロセスを見直す」「学習したら評価される仕組みが必要」「デジタル研修を必須化する」など、社内プロセスや教育手段に関するご提案が多く、「本当にそれは最終的なお客さまに価値を提供することに繋がるのだろうか?」と、引っかかっている部分はありました。そんな中、チェンジさんのご提案は、「SMBCグループがどういうお客さまとお付き合いがあるのか」「そのお客さまはどのような課題を抱えていらっしゃるのか」といったお客さまを見据えたご提案だったので、一緒にパートナーとして教育施策を考えていけるのではないかと感じました。

ステップを踏んで物事を学んでいく

今回開発したプログラムの概要を教えてください。

松尾様:

まず、全従業員ですので日本全国の営業部署の方が学習できるように、そしてコロナ禍ということもあり、集合型研修ではなく完全オンラインで学習できるeラーニング動画をベースに作りました。動画コンテンツを作る際にポイントとなったのが、「マインド・リテラシー・スキル」の学習ステップです。我々がこれまで実施していた教育は知識を身につける「リテラシー」だけでした。デジタル知識を覚えただけでは行動変革に結びつかないのではないか、という疑問をチェンジさんと一緒に紐解き、「マインド・リテラシー・スキル」にたどり着きました。まずはマインドセット。なぜ、ITとは無関係の自分(SMBCグループ全従業員)がデジタルを学ばなければならないのか、という意識を、まずはしっかりと理解する必要があります。

そして、リテラシー。「デジタル技術とは何なのか」「どういう効果や導入メリットがあるのか」を学びます。最後にスキル。「マインドやリテラシーで得た知識をどう現場で使うのか」「どうやって実際にお客さまに提案するのか」というやり方を身につけていきます。この3つのステップは非常に大切だと思っています。このステップは、私たちの日常生活においても言えることだと感じています。例えば、魚釣りに興味ない人に、ルアーや釣竿について説明しても、興味を持たないし、勉強しようなんて気にならないですよね。むしろ興味もないのにあれこれ説明されても苦痛だと思います。なので、まずは「釣りって楽しいよね」ということをしっかりと心から感じ、マインドを変えてから、釣竿とは、ルアーとは、という知識を学び、最後に釣竿をどうやって使うのか、といった実際に魚を釣る方法を学びます。このように、我々はステップを踏んで物事を学んでいくと思うのです。

お客さまのデジタルニーズを喚起し、デジタルソリューションを提案する、あるいは共にデジタルビジネスを共創する

金融業というビジネスでありながら、お客さまからデジタルの話をされる機会は増えているのでしょうか?

松尾様:

増えていますね。2つポイントがあって、1つ目は、お客さまからデジタルに関する情報提供を頼って頂くことが増えてきたことです。お客さまもデジタル変革という新しいチャレンジをしようとしています。そうした中で「デジタルの知識や方法が身についていないので勉強会を開いてほしい」「何か良い情報はないか?」と、SMBCグループを頼って頂く機会は増えています。やはりSMBCグループはこれまでも先進的なデジタル活用の取組・チャレンジを続けており、また、広い営業網により全国のお客さまと最も身近なパートナーとしてご相談に応じられることから、お声がけをいただけるのだと思います。

2つ目は、金融サービスだけでなくデジタルも含めたトータルでのソリューション提案をする必要が増してきたことです。例えば法人のお客さまであれば、複雑化する社会・経営環境の中で、お客さまにとって金融サービスはビジネス設計の一部でしかなく、例えば他にも、電子決済をどうするか、販売チャネルのオンライン化、店舗の省人化・無人化や、来店予約、来客予測をAIを使って、といったデジタルサービス・ソリューションを踏まえ、トータルで考えてビジネス設計をしなければなりません。金融サービスに加え、デジタルサービス・ソリューションも併せてご提案できればより多くのお客さまに喜んでいただけるのだと現場は肌感覚でも感じています。

あらゆる業種においてDXが求められている中で、お客さまのお悩みもデジタル中心になってきているのですね。

松尾様:
そうですね。更に言うと、お客さまご自身がデジタルのニーズに気付けてないというケースもあります。「自社の課題解決やビジネス変革のためにこういうデジタル技術、サービスが欲しい」というニーズが明確なお客さまであればフィットするサービスをより早く、より安くご提案することができますが、「課題を解決する方法がわからない」、あるいは「何が課題かわからない」といったことも多いと思います。そうしたときにSMBCグループがお客さまのデジタルニーズを喚起し、SMBCグループが持つサービスを含めた総合的なデジタルソリューションを提案する、あるいはお客さまと共にデジタルビジネスを共創する、そういったシーンを想定した知識、やり方を学習することで、真のお客さまのお悩みやニーズに対応することができるのだと思います。こうしたお客さまとの取組をSMBCグループ全体で推進していくことで、日本のDX変革を底上げすることができるのではないかと考えています。

プログラムの企画開発で特に難しかった点や苦労された点はありますか?

内山様:
「マインド・リテラシー・スキル」の「マインド」と「スキル」の部分は試行錯誤の連続でした。「マインド」の部分では、SMBCグループ従業員がいかに自分事としてデジタル学習の必要性を理解するかを伝える必要があります。しかし、「日本社会は今変わっています」「変わらないと既存ビジネスが淘汰されるかもしれません」「チャレンジしてみましょう」これではよくあるセミナーや講演の内容と変わらないし、どうしても自分事にしにくいですよね。自分の周りのお客さま、自社、そして競合がどう変化して、なぜデジタル活用が求められているのかを “SMBCグループ従業員である自分”を主語にして理解していくかが非常に重要だと思っているので、主語を変換する工程は苦労しましたし、チェンジさんと一緒に考えながら進めていきました。「スキル」の部分では、一口にデジタル技術を活用すると言っても、誰がいつどこで活用するのかという整理整頓が必要でした。しかしチェンジさんと会話を続ける中で業務シーンごとのスキルの活用方法が整理され、第一歩の踏み出し方をうまく伝えられる動画となりました。

今回開発されたeラーニングを受講された方からの評判はいかがですか?

松尾様:
多くの方から前向きなコメントが届いています。やはり動画を見て行動変革に繋がったかが重要です。ある営業部署では、「じゃあ来週面談のあるお客さまにこういう課題をお持ちでないか聞いてみよう」とか、「お客さまからお声がけがあったので今後DX勉強会をやることになりました」とか、そういった行動に繋がり、お客さまに喜んでいただけることが非常にうれしいです。

オリジナルでeラーニングを開発された価値があったと言えそうですね。

松尾様:
はい。特に1番最初のマインドセットの部分を開発したことは非常に価値があったと思います。デジタルを学ぶことは会社や日本にとって必要であるといって、自分が主語から離れていくと、行動変革に繋がらないと思います。いかに自分事として捉えてもらうかはこだわったポイントです。

今後のデジタル人材育成の展望を聞かせてください。

松尾様:
今回は全従業員に受講してもらえるよう、隙間時間でも見ることのできる動画コンテンツという形にしましたが、やはり動画だと自分一人だけで学ぶので捉え方も人それぞれ違ってくると思います。ですので、今後はオンラインワークショップ研修などを開発し、動画コンテンツで学んだことを腹に落としつつ、色んな人の考え方や捉え方を踏まえて、自分なりに咀嚼する機会を作りたいと考えています。デジタルを学ぶことは、なにか1つの正解を知る、という学びではないと感じています。新しい発想、発展性・自立性といったものが大事になる分野だと思いますので、いろんな方の意見を取り入れ、自分なりの言葉に咀嚼し、またそれを発展させ、展開させていく、そういった機会をしっかりと提供するつもりです。また、今回作ったプログラムは基礎の基礎だと思っています。「マインドセットからリテラシーを身につけ、最初の第一歩を踏み出す」という非常に大事な部分を開発したので、今まで単発だった点と点がつながり、面としての素地が整ったと思います。この面を更に広げつつ、全体の教育設計も含め考えていきたいです。

最後に、教育プログラムの開発パートナーにチェンジを選んで良かったのはどのような点でしょうか?

内山様:
デジタル人材育成のノウハウをお持ちなのはもちろん、私が一番感動したのが、我々の言語化できていない思いを汲み取って形にしていただいたことです。例えば学習コンセプトストーリーを作っていただきまして、ぼんやりとしか思っていなかったものを非常に良い形で現していただけたことに感銘を受けました。特に、SMBCグループが金融の海からデジタル含めた地球全体へと活動領域を広げていく生物進化「肺魚」を学習コンセプトにしてくださったのは脱帽でした。カラを破ったコンセプトは社内情宣の中でも非常に話題を呼びました。
松尾様:
チェンジさんは、実際の現場を知っているからこそ出てくる言葉が多くありました。成功だけではなく、ご苦労された経験もあるとは思いますが、そういった現場に根差したご経験があるからこそ我々が考えつかなかったご提案に繋がったのかな、と思います。

本日はありがとうございました。

【編集後記】

今回のインタビューを通じて、松尾様、内山様がお客さまのことを中心にしたデジタル人材育成を考えていらっしゃることに一層感銘を受けました。開発中も、「営業の方もお客さまを1番に考えて動いているので、お客さまに焦点をあてて教材を作りたい」と仰っており、普段直接お客さまとの接点がない職種の方も一丸となってお客さまの成長を考える姿勢が、SMBCグループ様がデジタル先進企業として益々のご発展を遂げられている要因の一つなのではないか、と感じます。

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