DX認定とは?DXの重要性やDX認定のプロセスについて解説
更新日:2024年10月30日

DX認定とは、企業などの事業者でDXの推進に必要な準備が整っていることを国が認定する制度のことです。企業の規模や業種に関係なく、DX認定は重要な制度と言われていますが、なぜDXの推進が重要なのでしょうか。
この記事では、DXが重要視される理由、DX認定を取得するメリット、認定までのプロセス、申請方法などを解説します。DX認定について詳しく知りたい、DX認定の取得を検討している企業の担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
DX認定とは

DX認定とは、2020年(令和2年)5月に施行され、同年11月から運用が開始された「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」に基づく、経済産業省による認定制度です。
この制度は、DX推進の準備が整っている法人、公益法人、個人事業者などの事業者を対象にしています。
認定は経済産業省が行いますが、審査などの運用業務は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が担当しています。
DX認定制度が創設された背景
DX認定制度が創設された背景には、2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」の存在があります。
このレポートによると、企業がレガシーシステムと呼ばれる古い基幹システムを使用し続けることで、2025年以降、年間最大で12兆円もの経済的損失が発生する可能性が示唆されました。これは「2025年の崖」問題と言われています。
2019年に経済産業省は「DX推進指標」を策定し、2019年から2020年にかけて指標に基づいた自己診断結果をIPAがまとめたところ、9割近い企業のDX推進が滞っていた状況を問題視しました。このことから、DXの推進を促す「DX認定制度」が策定されました。
DXが重要視される理由

DXが重要視される理由は複数ありますが、ここでは主な理由として、以下の6つを解説します。
レガシーシステムからの脱却
1つ目は、レガシーシステムからの脱却です。
レガシーシステムは、長年に渡って企業を支えてきたシステムですが、技術的に陳腐化し、現在のビジネス環境に適応するのが難しくなっています。また、カスタマイズを繰り返した結果、ブラックボックス化し、運用・保守が難しくなり、維持にかかるコストも高騰しています。
新システムの導入で、レガシーシステムから脱却し、ビジネス環境への順応と運用・保守の効率化が求められています。
IT人材不足への対応
2つ目は、IT人材不足への対応です。
経済産業省の調査によると、2030年にIT人材が最大79万人も不足する可能性があると言われており、IT人材の需要と供給のバランスが大きく崩れると予測されています。
DXを推進することで、少ないIT人材でも、業務に支障をきたさずに運用可能な体制を構築することが求められています。
業務の効率化とコストダウンの実現
3つ目は、業務の効率化とコストダウンの実現です。
デジタル技術を導入して、業務プロセスを自動化し業務を効率化させることで、少ない人員でも業務が可能です。また、ペーパーレスやリモートワークを促進させることで、人件費や経費の削減につながり、コストダウンが実現します。
スピーディーな意思決定の実現
4つ目は、スピーディーな意思決定です。
AIやビッグデータの活用で、これまでよりも収集できる情報量が増え、さらにリアルタイムでの情報収集も可能です。これらの情報を可視化できるツールを使用することで、意思決定権者がスピーディーかつ適切な意思決定が実現できます。
競争力の向上
5つ目は、デジタル技術を活用して革新的な製品やサービスを生み出し、新たな価値を提供することです。
これにより、市場での優位性を高めるのと同時に、新たな分野に進出することも可能です。自社の強みや特徴をデジタル技術と融合させ、他社との差別化を図ることで、さらなる競争力の向上が実現できます。
災害時のリスクマネジメント
6つ目は、災害時のリスクマネジメントに活用できることです。
DXを推進した企業は、リモートワークなどの新たな働き方を導入し、従来の企業文化を変革しています。データの共有や保管方法を見直して、社外からアクセスできる体制を構築しています。
この体制は、災害時に社員や顧客の安全を確保しつつ、遠隔地で業務を継続することにも活用できます。
DX認定を取得するメリット

DX認定を取得する主なメリットを5つ紹介します。
企業価値が向上する
DX認定を取得した事業者には、取得したことを証明するロゴマークを自社のサイトや名刺に入れることが認められます。この他に、IPAが運営している「DX推進ポータル」の「DX認定制度 認定事業者の一覧」にも、企業規模に関係なく掲載されるため、DXに取り組んでいる企業として、企業価値やブランドイメージの向上につながります。
税制面で優遇される
DX認定事業者は「DX投資促進税制」の対象となるため、税制面での優遇が受けられます。
制度の趣旨に沿った関連する機器などへの投資に対して、3%または5%の控除、もしくは30%の特別償却が認められます。
これらの税額控除を受けるには複数の条件がありますが、DX認定取得が必須条件です。
中小企業は融資などの支援が受けられる
中小企業がDX認定を取得すると、日本政策金融公庫から必要な設備投資について、低利率で融資が受けられます。また、民間金融機関から設備投資資金の融資を受ける場合、中小企業信用保険法の特例措置が認められます。
DX銘柄の応募資格が認められる
積極的にIT利活用している企業を「攻めのIT経営銘柄」として、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定を行っているのがDX銘柄です。
2015年から行われており、DX銘柄に認定されると、投資家やステークホルダーからの評価が高まるのと同時に一覧で社名が掲載されるため、自社のアピールにも有効です。
DXに関する自社の課題が整理できる
DX認定では、審査過程で自己判断を行いますが、そこで自社の課題に気付くことができます。申請時に「DX認定制度 申請チェックシート」に回答することで、条件を満たしているものと満たしていないものが明確になるため、自社の課題の整理に役立ちます。
DX認定のプロセス

DX認定を申請するまでのプロセスについて解説します。
社内でのプロセス
社内プロセスでは、現在のビジネス状況や経営環境を整理します。DXの目的である「企業の変革」を実現するため、ビジネスモデルの見直しなどを行い、経営ビジョンを策定します。策定後、取締役会で承認し公表します。
次に、策定した経営ビジョン実現のために必要な体制・組織案や、デジタル技術を活用できるITシステムの整備方策を検討し、DX戦略を策定します。こちらも取締役会の承認を受け、公表します。
最後に、DX戦略の進捗状況を管理する方法を検討して、DX戦略推進管理体制を策定します。これらは、自己分析と発信を定期的に行います。このように、社内プロセスは取締役会での承認と公表が必要なため、会社全体で取り組みます。
申請手続き前のプロセス
申請手続き前のプロセスは、経済産業省が策定したデジタルガバナンス・コード2.0が審査基準となっています。
ビジョン・ビジネスモデル
経営ビジョンの策定と、実現するためのビジネスモデルの設計で、デジタル技術の活用が、どのような効果があるのかを明示し、内容が公表されているか確認します。
戦略
DX推進にデジタル技術を、どのように活用するのか戦略を策定して記します。
戦略は2種類あり、「組織づくり・人材・企業文化に関する方策」では、デジタル技術の活用に必要な体制、組織、人材育成の方針を明示します。
「ITシステム・デジタル技術活用環境の整備に関する方策」では、ITシステム・デジタル技術の活用に必要な方針や計画を明示し、公表の有無も確認します。
成果と重要な成果指標
上記の戦略の達成度の指標づくりと自己評価を行います。
戦略の達成度はKPI(重要業績評価指標)で評価され、財務成果につながっているかも評価されます。こちらも公表の有無が確認されます。
ガバナンスシステム
ここでは、経営者が自ら進捗を発信しているかを確認する「情報発信」、経営者のリーダーシップの下で自社の現状を把握できているか確認する「経営者の課題把握」、「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」に基づいた対策と、監査が定期的に行われているか確認する「サイバーセキュリティ対策」が設定されています。
DX認定の申請方法

DX認定の審査事務は、IPAが行います。
申請の大まかな流れは、以下の通りです。
- 「申請ガイダンス」を確認して、申請の要件を満たしているかを確認
- 下記の申請書類をダウンロードして書類を作成
「DX認定制度 認定申請書」「申請チェックシート」 - 「DX認定制度 認定申請書」と「申請チェックシート」を記入し、必須資料の準備
- Web申請システムでの申請、必要書類の提出
- ※詳細は、IPAのサイトをご確認ください。
DX認定は、通年で申請可能です。
また、申請から認定までの期間は、60日(60営業日)です。
そのため、認定まで約3ヶ月、混雑している場合は、認定までに約4ヶ月かかる可能性があります。
この制度の認定期間は2年です。更新するには、認定から2年が経過する日の60日前までに認定更新申請書の提出が必要です。
まとめ

DX認定を取得すると、企業価値の向上、DX銘柄に選出される権利など、さまざまなメリットがあります。
IT技術とは、直接関係のない業種でも、今後DXへの取り組みを求められる可能性があります。将来を見据えて、DX認定取得を検討してみましょう。
DX認定取得とその後のDX推進には、人材育成が重要です。
ディジタルグロースアカデミアでは、DX人材の育成を目的とした教育・研修サポートを行っています。
DX認定取得と、その後のDX推進に必要なDX人材育成に興味をお持ちでしたら、ディジタルグロースアカデミアにご相談ください。
資料・研修動画ダウンロード申し込みページ
DXに関する様々な資料や動画がダウンロード可能です。