Case Studyお客様事例

創業95年の老舗企業がDXにチャレンジ!
年間180時間削減例も生まれた「自走するカルチャー」への変革

大日精化工業株式会社様

伝統的な「縦割り文化」と化学素材メーカーならではの「変化への慎重さ」から、DXの推進に高い壁を感じていた大日精化工業株式会社様。同社は中期経営計画に掲げる「データ駆動型ビジネスへの変革」に向け、実践型のDX研修プログラムと動画学習プラットフォームを導入しました。

座学に留まらない伴走支援により、現場主導の業務効率化も誕生。中には年間180時間削減の事例も生まれた。さらには生成AIを活用した独自の事例共有アプリの自社開発へと繋がり、全社的なボトムアップが加速しています。保守的だった組織がどのようにして「自走する組織」へと生まれ変わったのか、その変革の軌跡をDX推進責任者の前田様、推進者の川崎様に伺いました。

安定重視の素材メーカーを阻む「変化を恐れるカルチャー」と「1日25分の潜在的ロス」

求められる「データ駆動型ビジネス」への変革と、希薄な情報共有文化

同社では、中期経営計画において「データ駆動型ビジネスへの変革」を大方針として掲げていました。データを基盤とした迅速な意思決定と業務効率化は、これからの厳しいグローバル市場を生き抜くために不可欠な戦略だったからです。しかし、経営層が描く理想と現場のリアルな実態との間には、非常に大きなギャップが存在していました。

製造業、特にBtoBビジネスを展開する素材メーカーという特性上、何よりも最優先されるのは「製品の品質と安定供給」です。品質に影響を及ぼす4M(Man・Machine・Material・Method)変更を行う際には、お客様の承認手続きが必要となり、場合によっては変更前後の品質データを一定期間採取が必要になります。そのため、4M変更を行う際には、妥当性の評価を慎重に行ったうえで、それなりの労力が必要です。

このような環境下で長年培われたのは、確実性を重んじるカルチャーでした。それゆえ、既存のやり方を踏襲する傾向があり、部署ごとの専門性の高さもあって、他部署とのノウハウや情報の共有が必ずしもスムーズに行われていない状態が続いていたのです。

ITへの苦手意識と、1人あたり「1日25分」の無駄な業務

さらに、IT専門企業ではない同社においては、現場の社員すべてがデジタルツールに明るいわけではありませんでした。日常の業務でパソコンを触る機会が少ない社員や、パソコン操作自体に苦手意識を持つ社員も少なくありません。現場からは「ここを改善したい」という自発的な声が上がりにくく、従来の手作業による非効率な運用がそのまま維持されていました。

今から約3年前、現状把握のために一部の方に実施したアンケートでは、社員1人あたり、平均して「1日約25分」もの業務を、自分自身で “無駄だ” 、 “もっと効率化できるはずだ” と感じながらも、システムやルールの制約もあり、従来のやり方のまま踏襲し続けていることがわかりました。  

1人ひとりの時間はわずか25分かもしれません。しかし、全社員の年間労働時間で掛け合わせると、それは組織全体にとって膨大な機会損失を意味していました 。この潜在的な改善ポテンシャルを活かし、現場から自発的にデータを収集・分析し、共有し合う文化をいかに醸成するか。それが同社にとって大きな課題となっていました。

他社eラーニングツールの限界:「学ぶだけ」では変わらない現場

文化を改革すべく、当初は他社のeラーニングプラットフォームの導入も検討されました。世の中には、数千から数万という膨大な学習コンテンツを揃えた動画学習サービスがあふれています。

しかし、DX推進部には「いくら優れた教材があっても、通常業務の傍らで動画をただ流し見したり、早送りして『受講完了』ボタンを押すだけになってしまっては、現場の実践やカルチャーの変革には繋がらない」という強い懸念がありました。

必要だったのは、単なる知識のインプット(座学)ではなく、「現場の行動そのものが変わる」仕組みです。座学主体のツールの限界を感じていた同社は、より踏み込んだソリューションを模索することになります。

ディジタルグロースアカデミアを選んだ3つの決め手:楽しさ、実践性、そして安心感

数あるサービスの中から、同社が最終的にパートナーとして選んだのがディジタルグロースアカデミア(以下、DGA)でした。決め手となったのは、同社の組織風土に寄り添った「3つの要素」です。

  • 1つ目:動画学習プラットフォーム「みんなデ」が持つ『コンテンツの絶妙な温度感』

大学の講義のように硬すぎる教材では、ITに苦手意識のある現場社員が「難しそうだ」「自分には関係ない」と心を閉ざしてしまいます。一方で、砕けすぎてもビジネスの場に馴染みません。「みんなデ」はアニメテイストの楽しさを取り入れつつも、本質を突いた「砕けすぎず、硬すぎない」絶妙なバランスを保っていました。「これなら、DXは自分たちに必要なものだとポジティブに受け入れてもらえる」という直感があったと言います。

  • 2つ目:実業務の課題解決に直結する『実践型カリキュラム』

単なる動画視聴(eラーニング)のインプットだけで終わらせず、課題解決方法を学ぶワークショップを実施してくれる点が選定の理由となりました。さらに、研修内容を同社特有の課題感に合わせて柔軟にカスタマイズしてくれる対応力に加え、研修後の実践の場として同社が発案した「チャレンジメニュー」の設計においても、コンサルティングを通じて共に実践の仕組みを作り上げていく伴走力も決め手となりました。

  • 3つ目:KDDIグループとしてのインフラ・サポート面での『信頼感』

同社は元々インフラ面での付き合いがあった背景もあり、将来的に現場主導のDXを全社展開していく上での、中長期的なサポート体制に大きな安心感がありました。

上層部への説明資料をブラッシュアップ。外部の視点で「社内の壁」をこじ開ける

導入の方向性は決まったものの、次の関門は「上層部や決裁権限者への説明」でした。前例のないDX研修やプラットフォームの導入に対して、経営層からいかにスムーズに理解を獲得するか。ここでもDGAの伴走支援が大きな役割を果たします。

コンサルタントは、単に研修を販売するベンダーの枠を超え、同社のDX推進部の一員のように寄り添いました。上層部へ提出する説明資料や全社向けの案内文の文脈を細かく添削し、「経営層がどこに懸念を抱くか」「どう伝えれば社内摩擦を最小限に抑えられるか」に先回りして、スムーズに導入を軟着陸(スムーズランディング)させるためのシナリオを共に練り上げたのです。

当時、このプロジェクトを主導し、社内調整の壁に立ち向かっていたDX推進責任者の前田様は、外部パートナーの重要性について次のように熱く語ります。

            情報システム本部 DX推進部 部長 前田 智 様

「自社だけで考えていると、これまでの慣習や既存の枠組みにとらわれてしまい、変化への限界を自分たちで設定しがちになります。しかしDGAさんは、外の視点から、良い意味での“正論”でその壁をこじ開けてくれました。『そこは進まないと無理ですよ』と力強く背中を押された瞬間が何度もあり、本当に心強い壁打ち相手になっていただきました」

研修から生まれた「チャレンジ精神」と、AIを活用した事例共有アプリ『CroLog』の誕生

受講者の半数が課題解決を達成。成果を埋もれさせないための決断

いざ研修がスタートすると、組織に変化の兆しが現れ始めました。研修の締めくくりとして、受講した現場社員に「2〜3ヶ月で自部門の課題を実際に一つ解決する」という実戦的なチャレンジメニューを課したところ、結果として、参加者の半数以上が見事に自力で課題解決を達成したのです。これは、保守的だった現場にとって大きな自信となりました。

                       DGAの研修

しかし、DX推進部はこの成果を「研修の報告書」だけで終わらせることを良しとしませんでした。「ある部署で起きた業務効率化の知見は、必ず他の部署でも役に立つはずだ。同じような無駄を抱えている部署にこのノウハウを横展開できれば、全社のDXは一気に加速する」。この強い想いが、同社独自の事例共有プラットフォームアプリ「CroLog」の自社開発へと繋がっていくことになります。

生成AIを味方に。システム開発未経験から始まった「CroLog」構築の軌跡

               情報システム本部 DX推進部 川崎 琴音 様

この「CroLog」の開発を主導したのは、情報システム本部に異動して間もない川崎様でした。異動前は売掛金管理業務を中心とする販売管理部に所属しており、ITツールには日頃から触れていたものの、本格的なシステムコーディングの経験はなかったといいます。

そのような中で、研修や業務を通じて生成AIの有用性を実感した川崎様は、自らプロンプト(指示文)の工夫を重ねていきました。そして試行錯誤の末、Google Apps Script(GAS)とGemini APIを連携させ、今回のアプリを形にするに至りました。

開発当時の苦労と、AIを活用した手応えについて、川崎様は次のように振り返ります。

「以前はコードの書き方を一つひとつ調べていましたが、生成AIに『こうしたい』と日本語で指示を出すだけで、システムの土台が形になっていきます。まさに目から鱗が落ちるような体験でした」

サムネイル画像の自動生成に向けたプロンプト調整では、より良い出力を求めてテストを繰り返すうちに、1日の利用制限(トークン)に達してしまうこともあったそうです。

このエピソードは、生成AIのサポートを得ることで、コーディング経験が少なくても現場のアイデアを自らの手で形にできるという、新しい開発のあり方を示す好例と言えるのではないでしょうか。

「見たくなる」UIと、心理的ハードルを下げる戦略

アプリの運用にあたっては、誰もが迷わず、楽しく使えるよう、徹底的な工夫が施されました。

まず、現場の投稿負担を極限まで減らすため、入力項目をテキストベースの最低限に絞り込みました。また、テキストだけが無機質に並ぶ画面では、DXに関心のない社員を呼び込めません。そこで川崎様が目をつけたのが、SNSの動画や記事などで見かける「サムネイル」でした。

Gemini APIを裏側で走らせ、入力されたタイトルや概要から、見栄えの良いサムネイル画像を自動生成する仕組みを構築。プロンプトを細かく調整し、「目立つ大文字は最大3つまで」という制約をかけ、さらに業務改善の内容に応じたハッシュタグ(「スピードアップ」「標準化」等)のデータによって、画像の色味が自動で変わる視覚的な工夫を凝らしました。これにより、パッと見て何の話か伝わる、インパクトのある画面が完成しました。

また、「社内に公開する」という現場の心理的ハードルを下げるための戦略も秀逸でした。いきなりアプリを公開するのではなく、コラボレーションツールをGoogle Workspaceに刷新したときに作った、「なんでも気軽に相談できる全社チャットルーム」を運営し、発言しやすい土台(心理的安全性)を醸成。さらに、先述の研修から生まれた成功事例をあらかじめ30件ほどシステム内に溜めた状態で、満を持して全社公開しました。中身が空っぽの状態で最初の1人目が投稿しづらいというプレッシャーを無くしたのです。

縦割りカルチャーの解消、年間180時間削減、そして自発的なコラボレーションへ

この「CroLog」のリリースにより、強固だった縦割りの壁に大きな風穴が開きました。アプリを見た社員から、「この効率化の事例、うちの部署でも全く同じように取り入れられる」「どうやったのか詳しく教えてほしい」という声も挙がってきたのです。

それまでなら、部門の壁を越えて行うことが難しかった事例共有が、今や現場の人間同士が自発的にチャット等で連絡を取り合い、ノウハウを横展開する動きへと発展しています。プラットフォームが現場の「自走」を促すエコシステムとして、半自動的に機能し始めました。

DGAの研修・伴走支援と「CroLog」の相乗効果により、社内では具体的な定量的・定性的成果が次々と現れています。

成果の種類具体的な内容・数値効果
定量的効果・ある部署では、日々のルーティンを見直し1日15分、年間60時間の業務削減を達成
・別の部署では、形骸化していた従来業務を根本から廃止し、年間180時間の削減に成功
定性的効果・強固だった「縦割り文化」が薄れ、部門間のコミュニケーションや情報共有が劇的に活発化
・「この業務はもっと良くできるのではないか」と、社員自らが日々の業務から課題を発掘するチャレンジ精神(DXマインド)が醸成

受講人数を2倍に拡大。阻害要因を無くす「マネジメント向け研修」の同時展開へ

確かな手応えを感じた同社は、前期に60名規模で実施した「古い業務の変え方研修」を、今期は2倍の120名規模へと一気に拡大することを決定しました。

さらに、前期の運用から得た「リアルな反省」を即座に次の施策へと活かしています。それは、「研修を受けた部下が現場で熱量を持って実践しようとしても、部署として周囲の方がDXに詳しくないことから、受講者が孤立してしまう」という課題でした。

組織の持続性を担保するため、今期からは受講者の直属の上司(管理職層)を対象に、『DX推進のためのマネジメント向け研修』をセットで受講してもらう形に切り替えました。組織の上下双方向からDXの意識を挟み込むことで、現場の自走をより強固にサポートする体制を整えたのです。

ボトムアップの継続と、業務プロセスへの組み込み

同社のDX推進における大方針は、現場が自ら考え課題を解決していく「自走する組織」の実現です。同社が描く次のフェーズは、さらに高度なDXの仕組み化です 。これまでは個人レベルでのAI活用(資料作成や簡単な効率化)が中心でしたが、今後は一歩進め、日常的な業務プロセスそのものに組み込んで自動化していく計画を立てています。

「自分で作った方が100%早いが、それでは教育にならない。組織の持続性のために、現場の社員一人ひとりが自らの業務を棚卸しし、タスクを分解できる力を養う教育にこれからも投資し続ける」というDX推進部の姿勢は、ブレることがありません。

同様の課題を抱えている企業へのメッセージ

最後に、同じように「古いカルチャー」や「ITへの苦手意識」に悩むBtoB企業・製造業の読者へ向けて、かつては自身も変化に慎重だったという川崎様から、一歩を踏み出すための心強いメッセージをいただきました。

「変化への一歩は勇気がいるものですが、いきなり会社のすべてを大きく変えるような、壮大な目標を掲げる必要はありません。まずは『目の前の既存業務を少し見直してみる』という、小さな変化の積み重ねで良いのです。その小さな成功体験が重なれば、いずれ組織を動かす大きな変革へと繋がります。変化を恐れず、ぜひ小さな一歩からチャレンジしてみてほしいと思います」

パートナー(DGA)への期待と今後の改善に向けた生の声

同社はDGAのサポートに対して、「一つひとつの課題に寄り添い、議論が膠着しそうなときも外部の視点から正論で切り込んでくれる手厚い伴走体制」を高く評価しています。 時には正論を言われて落ち込んだ時もあったそうです。ただその経験も、真に必要なものとして受け入れることができたといいます。

一方で、今後のさらなるサービス向上への期待を込めて、率直なフィードバックやご要望も共有していただきました 。お互いが本音でぶつかり合い、高めあえるこの関係性こそが、大日精化工業様のDXを成功に導いた真の要因と言えるでしょう。

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