Columnコラム

【わかりやすく】DXとIT化の違いとは?DXが注目されている理由も説明

  • 公開日:2022年10月13日

昨今のビジネスシーンでは、「DX」という言葉を耳にすることが増えてきました。しかし、「DX=AIなどの導入によるIT化」と捉えている人も多いでしょう。

実際は、DXとIT化の意味は大きく異なります。そこで、この記事では以下の内容について詳しく解説します。

2025年の崖を回避して膨大な損失を出さないために、DXは避けて通れません。IT化との違いを正確に理解した上で、自社のDX推進に取り組みましょう。

DXとは

DXは、Digital Transformationの略語で、「デジタルによる変容」という意味の言葉です。経済産業省のDX推進ガイドラインによると、以下のように定義されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」です。

DXの事例を挙げると、ある保険会社がAIを取り入れた自動車保険のアプリを開発したことにより、事前に事故のリスクが正確に算出できるようになったといった変革があります。

また、レンタルユニフォームの製造・販売を行っている会社で自動採寸アプリを開発したことで、作業負担の軽減や適正な在庫管理ができるようになったという事例もあります。

DXのメリットは、デジタル技術を利用してシステムを最新化することにより業務プロセスが変化し、企業の競争力がアップする点です。他にも、市場の変化にも柔軟に対応できるようになることも、DXがもたらすメリットといえるでしょう。

IT化とは

IT化は、これまでの業務上の流れを効率的にして生産性の向上を目指すもので、量的な変化が目的になります。

例えば、クラウドサービスを活用することで情報の一元管理が可能になり、場所を選ばず情報を更新できるようになったという事例がこれにあたります。

業務プロセスがアナログからデジタル化され、時間が短縮するのと同時に精度が向上するのがメリットです。

企業において、DXを進める上でIT化は欠かせません。データの電子化やリモートワークの環境作りを進めることが、DXを成功へと導く第一歩なのです。

DXとIT化の違いとは

DXとIT化は、どちらもビジネスや社会におけるデジタル技術の活用を指す言葉ですが、その目的と視点、範囲とスケール、推進後の変化には大きな違いがあります。これらの違いを理解することで、自分の組織や業界におけるDXの必要性や方向性を見極められるでしょう。

ここからは、下記にわけてDXとIT化の違いを詳しく説明します。

  • 目的と視点の違い
  • 範囲とスケールの違い
  • 推進後の変化の違い

目的と視点の違い

まず、DXとIT化には目的と視点という2つの違いがあります。

DXの目的は、デジタル技術を使ってビジネスモデルや価値提供の仕組みを根本的に変革することです。従来の産業や社会の構造やルールを変えるために、顧客や市場に対する視点が重要です。

一方、IT化の目的は、デジタル技術を使って既存のビジネスプロセスやサービスを効率化や最適化することです。自社や組織内部のコストや品質、生産性などを改善するために、自社や組織に対する視点が重視されます。

そのため、IT化によってプロセスやサービスを効率化・最適化し、DXによってビジネスモデルや価値提供を改革するという密接な関係にあります。

範囲とスケールの違い

次に、DXとIT化には範囲とスケールの違いもあります。

DXの範囲は、デジタル技術を使って組織や業界、社会全体を変えることで、大規模かつ急速に変化するものです。IT化の範囲は、同様の技術を使って個別の部門やプロセス、サービスを変えること、スケールは小規模かつ徐々に変化します。

これは、デジタル技術は組織や業界、社会の境界や関係性を曖昧にしてしまう特性を持ちながらも、既存のシステムや規制などに制約されることが多いためです。

そのため、デジタル技術によるIT化は小さくスタートできるものですが、徐々にその範囲を拡大してスケールを大きくできるとDXを達成できるという流れができあがります。

DXとIT化は、範囲やスケールに違いがありますが、その普及状態によって呼び名が異なるという側面を持つといえます。

推進後の変化の違い

そして、DXとIT化では推進後の変化にも違いが挙げられます。DXによる変化は「質的変化」、IT化による変化は「量的変化」として考えるとわかりやすくなるでしょう。

DXは既存の仕組みやルールを破壊してデジタル技術を活用し、業務やビジネスの質や内容を変えます。しかし、IT化は基本的に既存の仕組みやルールに従って行われるため、業務やビジネスの質や内容は変わりません。

たとえば、IT化でオンライン教育システムの導入は既存の仕組みやルールに従いますが、DXによるオンライン教育サービスの提供なら教育内容や形式や対象者を自由にカスタマイズできるなどです。

このように、DXとIT化では推進後の変化が大きく異なり、先述した目的や視点、範囲やスケールも相応のレベルになると言えます。

DXとIT化の関係性

DXとIT化は、非常に密接した関係性があります。なぜなら、DXはIT化を手段として、ビジネスモデルそのものの変革を行うものだからです。

たとえば、紙ベースの業務をデジタル化することはIT化ですが、範囲やスケールは狭く、社内に目を向けた既存業務の改善です。しかし、そこからデジタル化した業務を使って、新たなサービスや価値を提供できればDXになります。

つまり、IT化はDXの前提条件であり、DXはIT化なしには実現できないとも言えます。たとえば、ライドシェアやグルメ宅配サービスなどは、デジタル技術によって実現した新たなビジネスモデルですが、それらを支えるITシステムやツールがなければ成り立ちません。

このようにDXとIT化は相互関係にあり、IT化を通じてビジネスモデルや業務プロセスそのものを変革することがDXの本質です。

IT化がDXの実現にどのように貢献するかの具体例

では、IT化はDXの実現にどのように貢献するのでしょうか。わかりやすい具体例を以下の2つにわけて解説します。

  • データの収集と分析
  • プロセスの自動化

データの収集と分析

データの収集と分析では、スマートフォンやIoT機器などのデバイスを使って、顧客や市場のニーズや傾向をリアルタイムで収集し、クラウドやAIなどの技術を使うことでデータを分析・活用することが挙げられます。これにより、より的確なビジネス判断やサービス提供が可能になるでしょう。

ネットショッピングでは、顧客の購買履歴やレビューなどのデータを分析して、パーソナライズされた商品やサービスを提供できます。工場では、機械や製品の稼働状況や品質などのデータをリアルタイムで監視・分析して、生産性や安全性を向上し、医療では、患者の健康状態や治療履歴などのデータを集約・分析して、最適な診断や治療方針を決めます。

このように、データの収集と分析は、DXによる組織や社会の変革に欠かせない要素です。

プロセスの自動化

プロセスの自動化としてよく知られているものは、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)やBPM(ビジネスプロセスマネジメント)などの技術を使うことで煩雑で単純な作業を自動化し、より創造的で価値ある業務に集中するなどです。

また金融では、AIやブロックチェーンなどの技術を使って、取引や決済などのプロセスを自動化でき、コストや時間を削減したり、信頼性やセキュリティを向上したりできます。教育では、オンライン学習システムやAIチューターなどのツールを使って学習内容や進度などを、農業ではドローンやセンサーなどの機器を使うことで耕作や収穫などを、それぞれ自動化できます。

これらの例からわかるように、プロセスの自動化は人間の負担を軽減し、DXの実現に大きく貢献してくれるでしょう。

DXが注目されているのはなぜ?

2018年に経済産業省が発表した「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」により、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」というワードに注目が集まるようになりました。さらに、コロナ禍でDXを推進する企業が急増しています。

レポートでは、DXを実行する際にはデジタル技術を活用するにあたっての経営戦略そのものが不可欠であるとしています。また、現状では具体的な方向性を模索している企業が多く、検証は繰り返されているものの改革にはつながっていないと指摘しています。

こうした今後の課題を踏まえて、既存のシステムをDXに適合するように見直す必要があると示唆しています。

さらに、「2025年の崖」を回避するためにDXが不可欠であることも、現在多くの企業経営者が注目している理由です。「2025年の崖」とは、DXレポートで用いられている表現で、既存のITシステムをDXできなかった場合、2025年以降に被る可能性が高い巨大なリスクのことを指します。

なぜ、莫大な額の損失を背負うことになるかというと、大半の既存のシステム(レガシーシステム)が原因のシステムトラブルが発生するからです。しかし、IT人材不足やITシステムの老朽化、経営戦略の欠如などの問題によってDXを阻まれている企業が多数を占めているのが日本の現状です。

2025年までに残された時間の中で速やかにDXを推進するためには、まず企業全体でDXに取り組む姿勢が求められます。DXによって目指すべきゴールを社内で共有することから成功が見えてくるでしょう。

さらに、社外のベンダー企業とも足並みを揃える必要があります。システムを刷新するにあたって、これまでの惰性で再構築を図るのではなく、契約そのものをゼロから見直して新たなシステムを構築するモチベーションで進めていくことが大切です。

経済産業省の「DX推進ガイドライン」とは

「DX推進ガイドライン」とは、DXの推進に必要な指針や取り組みについて経済産業省がまとめたものです。

2022年9月に、「DX推進ガイドライン」と「デジタルガバナンス・コード」を統合して、より利用者視点の指針となる「デジタルガバナンス・コード2.0」が発表されました。

企業において、DXを本格的に導入する際はITシステム構築の整備や知識の習得が必要です。

単にデジタル技術を取り入れただけでは、データの活用や連携が一部だけになってしまったり、既存のシステムの保守や運用に労力がかかってしまったりといった問題が起こる可能性があるからです。

DX推進ガイドラインには、企業の経営者がDXを正しく理解して経営の在り方やITシステムの構築といったポイントが紹介されています。

「DX推進ガイドライン」を参考にして、明確な目的のもとDXを推進しシステムの刷新を行いましょう。

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DX推進のメリットは?

DXを推進するメリットは、主に以下の3つです。

  • 業務の効率化
  • コストの削減
  • 新しいサービスやビジネスモデルの開発が可能

業務の効率化

DXによって業務が効率化されて生産性が向上するのが1つ目のメリットです。AI等の活用でヒューマンエラーが防止でき、人間は作業ではなくコア業務に専念できるようになります。

データの一元管理ができるようになり、社内でのデータ共有が可能になることも業務の効率化に大きく貢献します。DX推進の目的を社内で共有することで、組織の構造や業務を改革するきっかけにもなるでしょう。

ただし、新システムの導入や開発費用、パッケージの導入費用、ライセンス費用がかかります。

しかし、業務が自動化されることで人件費が削減できる点は2つ目のメリットといえます。

コストの削減

業務のプロセスが可視化されることが見直しにつながり、コストが削減できます。DXを活用したコスト削減は人件費の削減や業務の効率化に留まらず、顧客ニーズに合った商品やサービスの提供も可能にする点がポイントです。

満足度の高い商品やサービスの提供は、企業の利益に直結します。

新しいサービスやビジネスモデルの開発が可能

新規サービスやビジネスモデルの構築ができる点が3つ目のメリットです。DXの活用により、顧客行動のデータ化や分析が可能になります。

大量のデータをもとに、新規事業において必要不可欠になる明確なターゲットやゴールが設定できます。日々進化している市場ニーズの吸い上げにも、DXのデータを活用できます。

顧客ニーズが短いスパンで変化する昨今では、スモールスタートからトライ&エラーを繰り返して新たなビジネスを構築していくスタイルが求められています。

このように、DXの推進は企業の発展において欠くことのできない取り組みであるといえるでしょう。

DX推進するためには?

DXを推進するには、まずベースとして目的を明確にすることが必要です。目的を設定せずに進めてしまうと、DX導入後にうまく活用できず、成果が出ないまま終了してしまうといったことになりかねません。目的がないと、効果測定することも難しくなります。

会社全体で行う大きな取り組みなので、目的をはっきりと掲げて社員一丸となって進めることが大前提です。

目的を設定する際は、まず社内の課題を集め、その解決策としてDXを活用するといいでしょう。

目的を元に、最終的なビジョンまで落とし込むことも大切です。DXの導入によって会社はどのように変わるのか、しっかり共有できるように具現化してください。

ビジョンを伝えず業務の変化だけを現場の社員に伝えると、大きな混乱が生じる可能性があります。

もう1つ、DXを推進するための体制を構築するのも重要です。社内外の精鋭を集めた専門チームを作るのと同時に、一定の予算を確保しておいてください。

DXの推進には専門的な知識が不可欠です。システム関連の部署に所属するスタッフだけでは人材不足な場合、積極的に外部スタッフを加えましょう。

社内スタッフとIT系の外部スタッフが同じプロジェクトに参加することで、相乗効果が生まれることもあります。

専門チームを作るからといっても、DX推進は必ず全社員を巻き込んで進めてください。特に自社のビジネスや組織を熟知している社内からのDX人材の抜擢は重要です。

DX推進のためにはDX人材が必要!

DX推進には、優秀なDX人材が求められます。さらに言えば、上述の通り社内にDX人材が存在することがとても重要です。DX人材の育成を行っているディジタルグロースアカデミアでは、企業規模に囚われることなく、最適な学びの場所を提供しています。

例えば、演習やグループワークを行う研修プログラムがあります。研修では、参加者の間で活発に意見交換を行います。これにより、自分の考えをアウトプットしたり、他の参加者のフィードバックから新しいヒントを得たりといった機会が創出できます。

研修プログラムは、一般社員が対象のべーシックコースから部長層や経営層まで、様々な種類が揃っています。まずはお気軽にお問い合わせください。

【監修】

日下 規男
ディジタルグロースアカデミア マーケティング担当 マネージャ

2011年よりKDDIにてIoTサービスを担当。2018年IoTごみ箱の実証実験でMCPCアワードを受賞。
2019年MCPC IoT委員会にて副委員長を拝命したのち、2021年4月ディジタルグロースアカデミア設立とともに出向。

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