DX=デジタル化ではない!違いやデジタル化の例なども紹介
- 公開日:2022年10月13日
DXとデジタル化は、似て非なるものですから、それぞれの意味を理解しておきましょう。
DXは、AIやIoTといったデジタル技術を使って良い方向へ変革することを指します。一方でデジタル化とは、生産性の向上や業務の効率化を目的にデジタル技術を導入することを意味します。
つまり、DXを推進するための手段の1つがデジタル化というわけです。
この記事では、DXとデジタル化の違いについて、詳しく解説します。
目次
DX=デジタル化ではない!違いとは?
DXとデジタル化は、目的が明確に異なります。大まかにいうと、デジタル化とはDXを推進するためのツールです。DXは、デジタル技術を用いてビジネスや生活に変革や新しい価値を生み出すことが目的です。
対して、デジタル化は業務効率や負荷の軽減を目的にデジタル技術を活用することをいいます。
例えばカメラの変遷で考えてみると、昔はフィルムを使っていたフィルムカメラがデジタルカメラに変わったことがデジタル化です。デジタルカメラに変わったことで、気軽に写真をシェアできるようになったライフスタイルの変革がDXです。
この項目では、両者について詳しく解説します。
- DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
- デジタル化とは
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DXの直訳は「デジタル変革」です。広い意味でいうと、ビジネスの領域だけでなくデジタル技術を用いて社会を変革することをいいます。
提唱者は、スウェーデンにあるウメオ大学のエリック・ストルターマン教授です。2004年に発表された当初は、「デジタルトランスフォーメーション」ではなく、「デジタルディスラプション」と呼ばれていました。
デジタルディスプラプションは、既存の枠を覆して革新的な変化を起こすことを目的としています。一方で、現在のデジタルトランスフォーメーションの目的は、デジタル技術を活用してビジネスモデルや企業風土そのものを変革し、新たに生み出すことによって新しい価値を提供することです。
これまでにない新サービスや新商品を創造することで、競合他社と差別化して競争力を向上させるのが最終的な目的となっています。市場の変化が著しい時代の中で、企業が競争に勝ち残るためにはDXの推進が至上の命題なのです。
デジタル化とは
デジタル化とは、アナログの状態からデジタルに切り替えることを指します。例えば、ぜんまい仕掛けだった時計に、数字が変わるデジタル時計が登場したのもデジタル化の1つです。
マニュアル車にオートマチック車が加わったのも、ブラウン管テレビから地デジに切り替わったのもデジタル化です。
デジタル化は、ビジネスシーンから私たちの身近な場所まで、あらゆるところで進んでいます。そして、デジタル化の目的は事例からもわかるように負荷の軽減や効率化です。
DXとデジタル化の違いを正確に理解して、自社のDXを適切に推進しましょう。
DX推進のためにはデジタル化が必要
DX推進において、デジタル化はツールの1つです。デジタル化が完了しても、DX推進のための環境の一部を整えただけに過ぎません。
しかし、DX推進にデジタル化は不可欠です。というのも、デジタル化の延長線上にDXがあるからです。
この項目では、DXに進む前のデジタル化を以下の2つの段階に分けて解説します。
- デジタル化①:デジタイゼーションとは
- デジタル化②:デジタライゼーションとは
デジタル化①:デジタイゼーションとは
デジタル化の初期段階を、デジタイゼーションといいます。つまり、アナログの状態からデジタルへの移行という、単なるデジタル化のことです。
ビジネスの現場でいうと、例えばこれまで書類で管理していたデータを、システムに入力してデジタル化することがこれにあたります。
デジタイゼーションの目的は、業務効率アップやコスト削減だけに留まりません。書類をデジタル化することで、経年劣化を防止し、共有しやすいツールとして利用するといった目的もあります。
デジタイゼーションを進める際は、社員から課題をヒアリングした結果をもとにデジタル化する業務プロセスを選定します。
社員全員のITリテラシーのスキルアップや、デジタル化した後のシミュレーションを事前に行うのも大切です。
デジタル化②:デジタライゼーションとは
デジタライゼーションは、業務の過程のデジタル化です。例えば、書類管理をデジタル化してシステム上で管理できるように仕組みを整えることをいいます。
デジタル化したデータを即座に出力したり共有したりといった仕組みを構築する業務プロセスが、デジタル化の2つめのステップです。
デジタイゼーションもデジタライゼーションも、DXには欠かすことができません。
デジタル化の例
DX推進は、次の3つの段階を経て確立する必要があります。
- デジタイゼーション
- デジタライゼーション
- デジタルトランスフォーメーション
まず、業務のアナログ情報をデジタル化(デジタイゼーション)し、業務フローやプロセスを最適化(デジタライゼーション)します。
こうした環境を整えてから、ビジネスモデルをデジタル中心に変革(デジタルトランスフォーメーション)するという流れです。
昨今では、すでに様々なビジネスシーンでデジタル化が進んでいるのは周知の事実です。
この項目では、企業におけるデジタル化の具体的な事例を3つ紹介します。
- AIによるビジネスチャットの導入
- IoT機器の導入によるデータの収集・見える化
- オンラインでの会議・営業
AIによるビジネスチャットの導入
コロナ禍でテレワークが浸透すると、ビジネスチャットを導入する企業が急増しました。ビジネスチャットとは、社内外のスタッフとのコミュニケーションツールです。具体的な例としては、SlackやChatworkなどが挙げられます。
挨拶文を付けず気軽に要件だけ送れて絵文字だけでの返信もできるので、スピード感あるやり取りが可能です。
また、AI機能を利用したお客様対応システムなども注目を集めています。ユーザーからの問い合わせにAIが必要な情報を検索して、瞬時に答えを出すシステムです。従来は、人間が1件ずつ対応して返答していたので、膨大な労力とコストがかかっていました。
これを、AIが担当することで大幅な業務効率のアップが実現できます。ユーザーにとっても、高度な自動化機能により自然な会話で欲しい返答が受け取れるため高い満足度が得られるでしょう。
IoT機器の導入によるデータの収集・見える化
製造業では、IoT技術を導入することでリアルタイムでのデータ収集が可能になりました。
仕組みは、まず製造現場でデータを発掘し、工場のIoTプラットフォームでデータの収集と統合を行います。これを基に、生産管理アプリが統計解析や機械学習、AIなどによりデータの見える化と分析を実施します。
この仕組みが工場運営の高度化と効率化を実現し、顧客への価値提供につながります。情報基盤であるIoTプラットフォームは、工場の設備をすべてネットワークでつないだのがポイントです。
クラウドやデータベースにすべての情報が集まるので、日本と海外拠点の間でリアルタイムでの共有も可能になりました。
オンラインでの会議・営業
身近なところでデジタル化を実感するのが、オンラインを活用した会議や営業でしょう。リモートワークに欠かせないオンライン会議は、次のようなWebならではの便利な機能があります。
- 録音や録画が手軽にできる
- ファイルの共有がスマートにできる
- 背景を自由に変えられる
基本的にWeb会議ツールは無料で使える上、迅速にコンタクトが取れるので、大幅な生産性の向上を可能にします。
また、オンライン商談ツールは、BtoB向けとBtoC向けの2パターンに分かれていて、こちらもそれぞれたくさんのツールが利用されています。
BtoBでは、名刺交換やチャット機能、営業上の台本であるトークスクリプトの表示などの機能などが代表例です。BtoC向けの機能には、ステータス管理や担当者の自動振り分けがあり、結果につながりやすいと高く評価されています。
DX推進をすべき理由
ビジネスにおけるデジタル化は、生産性が向上して作業効率が上がったり、コストを削減できたりといったプラスの効果をもたらします。さらに、DXはビジネスモデルそのものの変革や新しい製品、サービスの提供を可能にします。
例えば、自動車の変遷で考えてみるとこれまで人力や馬に頼っていた移動に、エンジンを動力にした自動車が加わりました。自動車という革新的な技術が導入されたことがデジタル化で、移動時間の大幅な短縮が実現したのです。
そして、自動車の急速な普及と共にライフスタイルが大きく変化し、街づくりや道路の整備など社会全体が大きく様変わりして変革を遂げたことがDXにあたります。
デジタル化のみでは、単にアナログからデジタル技術に変わっただけに過ぎません。デジタル技術を活用することで根本から変革し、新しい価値を生み出してこそ意味があるのです。
DX推進には、人材や経営戦略、IT投資の不足といった課題が残されています。アプリケーションの設計ができ、デジタル技術に加えてビジネスの知識を習得しているDX人材の育成は、必要不可欠です。
さらに、経営層が積極的にDXに理解を示し、経営戦略や経営投資の方向転換を図ることが大前提になります。
ビジネスシーンでは、DX推進により競合他社との差別化を進め競争力を向上させられるでしょう。
DXを推進するための流れ
DXを推進するためには、以下の流れに沿って計画的に進めましょう。
- ビジョンの確立
- 組織全体のコミットメント
- 戦略の立案
- リソースの確保
- ツールの選定
- 導入と実装
- 継続的な改善、成功事例の共有
1. ビジョンの確立
まず、DXの目的と目標を明確にし、どのような価値を提供したいか、どのような課題を解決したいかを定義します。ビジョンは組織のミッションやビジネスモデルと整合性があるようにし、ステークホルダーに共有します。
2. 組織全体のコミットメント
次に、DXは組織全体の取り組みであることから、トップダウンだけでなく、ボトムアップの意識改革も必要です。組織のリーダーやメンバーがDXのビジョンに賛同し、積極的に参画できるようにします。
また、DXに関する教育や研修を実施し、デジタルスキルやマインドセットを向上させることも大切です。
3. 戦略の立案
コミットメントが完了したら、DXのビジョンを実現するために、具体的な戦略やアクションプランを策定します。戦略は「SMART」の指標で設定し、優先順位や期限を明確にします。
項目 | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
特定性(Specific) | 何を達成するのか、どのように達成するのかを明確にする | オンラインストアの売上を年間10%増加させる |
測定の可能性(Measurable) | 進捗を追跡し、達成度を評価するために具体的な数値や基準を決める | 顧客満足度を5段階評価で4以上にする |
達成の可能性(Achievable) | 資源や能力、環境の制約を考慮し、目標の達成に必要な条件や手段を整理する | プロジェクトの予算内で新製品を開発する |
関連性(Relevant) | 目標が組織の目的や成果に貢献し、戦略的な方向性を示しているかを確認する | 環境にやさしい製品を提供することで、企業の持続可能性を向上させる |
期限(Time-bound) | 目標の達成までの期間やスケジュールを明確にし、進捗を追跡するためのタイムフレームを設定する | 新商品の開発を6ヶ月以内に完了させる |
「SMART」の目標設定は、DXの推進やプロジェクトの成功に向けて重要な指針となります。また、戦略は柔軟に見直しや修正ができるようにしておきましょう。
4. リソースの確保
目標設定のあとは、リソースを確保します。DXを推進するためには、人的、物的、財務的なリソースを適切に配分し、戦略に沿って効率的に活用しながら、コストやリスクを管理します。
また、外部のパートナーや専門家と連携し、必要な知見や技術を得ることも有効です。
5. ツールの選定
また、DXではデジタル技術やツールを活用して業務やサービスを改善します。ツールの選定は、自社のニーズや目標に合わせて行い、ユーザーの利便性やセキュリティも考慮しましょう。
ツールは単なる手段であり、目的や価値を見失わないことが大切です。
6. 導入と実装
実際にツールを導入する際には、テストやトライアルを行い、問題点や改善点を洗い出します。実装する際には、段階的に行い、フィードバックや評価を受けながら改善します。
加えて、ユーザーへのサポートや教育も重視し、利用促進や満足度向上に努めると良いでしょう。
7. 継続的な改善、成功事例の共有
最後に、DXは一度で完了するものではなく、継続的な改善が必要なことも忘れてはなりません。データや指標を分析し、効果を測定したり、「ROI = 利益金額 ÷ 投資金額 × 100%」の計算式でROI(Return on Investment)評価をしたりしましょう。
また、成功事例や失敗事例を組織内外に共有し、学びや知見も蓄積します。加えて、市場や顧客のニーズに応じて、DXのビジョンや戦略の更新も実施することも大切です。
DXを推進するためのポイント
DXを推進するためには、以下のポイントを押さえましょう。
- ビジョンとリーダーシップを持つ
- 社内全体でDXについての知識を深める
- DXプロジェクトを顧客中心に設計する
- デジタル人材の育成を行う
- 外部のパートナーと協力し必要な専門知識やリソースを取り入れる
- 失敗事例や成功事例を見ておく
ビジョンとリーダーシップを持つ
DXは単なる技術導入ではなく、ビジネスモデルや組織文化の変革を伴います。そのため、DXの目的や方向性を明確にし、組織全体に共有する強いビジョンとリーダーシップが必要です。
リーダーはDXの意義やメリットを伝え、社員のモチベーションや参加意識を高める役割を果たしましょう。ビジョンとリーダーシップがあれば、社員やパートナーのモチベーションや協力を得やすくなります。
社内全体でDXについての知識を深める
また、DXは社内全体の取り組みです。社員一人ひとりがDXについての基礎知識や最新動向を理解し、自分の業務にどう関係するかを考える必要があります。知識があれば、DXの必要性やメリットを理解しやすくなり、課題や問題も発見しやすくなります。
この場合、社内でDXに関する勉強会やセミナーを開催したり、オンラインコースや書籍などの教材を活用したりすることで、全体でDXについての知識を深める方法が有効です。
DXプロジェクトを顧客中心に設計する
そして、DXの最終的な目的には、顧客満足度やロイヤルティを高めることが含まれます。DXプロジェクトの推進においては、顧客のニーズや期待に応えるように設計する必要があるでしょう。
例えば、顧客とのコミュニケーションやフィードバックを積極的に取り入れたり、顧客体験(CX)や顧客満足度(CSAT)などの指標で効果測定を行ったりすることで、DXプロジェクトを顧客中心に設計できます。
このように、顧客中心に設計することで、DXの効果や価値を高めることができます。
デジタル人材の育成を行う
DXは、デジタル技術を活用する人材が重要です。そのため、デジタルスキルやデジタルマインドセットを持った人材の育成を行う必要があります。
デジタル人材の育成には、社内外から専門家やメンターを招いたり、社員同士で知識や経験を共有したり、実践的なプロジェクトやチャレンジに参加させたりすることが有効です。また、教育やトレーニングだけでなく、実践や挑戦も含めておくと効果を高められます。
外部のパートナーと協力し必要な専門知識やリソースを取り入れる
また、DXは複雑で多岐にわたる分野であるため、自社だけではカバーできない専門知識やリソースが必要な場合があります。
外部のパートナーと協力し、必要な技術やサービス、ノウハウやアイデアなどを取り入れることで、DXのスピードや品質を向上させましょう。DXの知識を獲得するだけに限らず、人材の育成においても幅広く支援するパートナーを見つけることが大切です。
失敗事例や成功事例を見ておく
最後に、DXを推進する際には、過去に行われた取り組みの成果や課題を分析することも重要です。自社や他社の失敗事例や成功事例を見ておくことで、DXの目的や方向性、戦略や手法、リスクや評価などについて学ぶことができます。
また、事例から得られた知見や教訓を自社の状況に応じて適用することで、DXの効果を高めることも可能です。失敗事例や成功事例を見ておくことは、DXを推進するための有効なポイントです。
まとめ:DX推進のためにもDX人材を確保・育成しよう
DX推進に不可欠である優秀なDX人材の育成を行っているのが、ディジタルグロースアカデミアです。様々なジャンルの企業に向けて、最適な学びの場所を提供しています。
例えば、演習やグループワークを行う研修プログラムの提供などです。研修を通して、参加者は他の参加者と共に活発なディスカッションを行って考えをまとめていきます。
他の参加者のフィードバックから、新しいヒントを得ることもあるでしょう。
研修プログラムは、一般社員が対象のべーシックコースから部長層や経営層まで揃っています。自社のDX推進の足掛かりに、DX人材の育成を検討してみませんか?
【監修】
日下 規男
ディジタルグロースアカデミア マーケティング担当 マネージャ
2011年よりKDDIにてIoTサービスを担当。2018年IoTごみ箱の実証実験でMCPCアワードを受賞。
2019年MCPC IoT委員会にて副委員長を拝命したのち、2021年4月ディジタルグロースアカデミア設立とともに出向。
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