製造業(BtoB)におけるDX人財育成の第1歩
~全員で目指す顧客価値創造~
デクセリアルズ株式会社様
(左から一番目)大河原秀之様 デクセリアルズ株式会社 DX推進部 担当部長
(左から二番目)菱沼啓之様 デクセリアルズ株式会社 DX推進部 統括部長
(右から一番目)堤敏博様 デクセリアルズ株式会社 DX推進部 統括課長
スマートフォンやノートPCをはじめとするエレクトロニクス機器や、電装化が進む自動車に欠かせない電子部品、接合材料、光学材料など機能性材料の開発・製造・販売を手掛けられているデクセリアルズ様では、今後、デジタル・テクノロジーを活用した社会全体のデジタル化および社会課題の解決が進むことを見据えて、モノ売りからコト売りへ変化し、顧客に寄り添った製品・サービス提供を目指されています。その実現に向け、DX推進部を設立、全社DX人財育成に取り組まれています。
具体的には、2023年2~3月でDX人財育成体系の構築し、同7月よりe-Learning+研修/ワークショップという形式で教育をスタートしました。教育をスタートさせて約1ヶ月。他の製造業では人財育成で試行錯誤し、苦労される中、デクセリアルズ様は第1関門とも言える全社のマインド醸成で成果をあげられています。今回、人財育成体系策定や教育の準備・実施に対する想い、さらには教育実施前後の受講生や各職場の変化について、DX推進部の菱沼様、大河原様、堤様にお話しを伺いました。
デクセリアルズ様が全社を挙げてDXの人財育成に取り組もうとされたきっかけを教えてください。
事業内容とビジネスの目指す姿、それに対する課題感
当社が取り扱う製品は、世の中のみなさまに馴染みのある液晶テレビやスマートフォン、タブレットPCなどに使われています。特に、機能性材料を得意分野としており、グローバルシェアの高い、高付加価値製品を生み出し続けています。そこには、商品開発を支える「材料開発」だけではなく、どう生産するかという「プロセス技術」、お客様をサポートする「評価技術」「分析・解析技術」と、開発からお客様サポートに至るまでの各工程の研究開発力に強みがあります。また、将来への展望として、独自の技術力を活かし、自動車や光半導体など新たな分野への進出も目指しています。
当社は、「価値を創る人を創る」を人事理念に掲げており、個人の自主性や積極性を尊重し、社員一人ひとりが力を最大限発揮できる職場づくりを大切にしています。それにより「自ら学び、自ら考え、自ら行動し、成長しつづける」風土が醸成されています。
とはいえ、社会情勢の変化やVUCAの時代である昨今、当社のビジネスとしてもポートフォリオの拡大やボラティリティの軽減などへの対応がもはや待ったなしの状況であり、この先の社会課題の解決や持続的成長の実現には、デジタルを活用した変革が必要不可欠です。BtoBビジネス中心の製造業においても例外ではなく、これまでの製品を作って売るというモノ売りから、製品+体験/感動をセットで提供するコト売りへの変化や更なるUX向上など、デジタルを活用して、顧客に寄り添った製品・サービスの提供が求められています。
全社でデジタルによる変革スピードを加速させるためには、一部の社員による自分たち視点の業務改善ではなく全員が顧客視点で変革させるといったマインドが必要であり、また、進化し続けるデジタルリテラシーの向上や、顧客視点での製品・サービスの発想が必要であると考え、全社員を対象としたDX人財育成に取り組むこととしました。
DX人財育成を取り組むに至ったトップ(旗振り役)の想いやそれを推進する主管部門の設立経緯やミッション
今回のDX人財育成開始にあたり、社長より下記のようなコメントを頂きました。
当社を取り巻く外部環境の不確実性が増している状況下においても、事業を着実に運営しながら、持続的な成長に向けてチャレンジするためには、自分たちで変革をきっちりとやり遂げて、強い企業体質を作っていくことが不可欠と考えました。
そこで経営基盤強化の取り組みとして、DXの推進部門を新設し、デジタルによる全社変革を強力に推し進めることとしました。
このような環境下で我々の一番のリスクは、私たち自身がその変化に対応できない、変化にあわせて変革(transformation)できないということです。デジタル変革を社員一人ひとりが認識し、自らの業務を適応させていくことで、会社の競争力の維持・強化へ繋げていく必要があります。
そのためにもDX教育、人財育成に取り組み意識改革や推進力強化を図りたいと考えました。
人財育成施策の企画段階ではどのようなことを重視されましたか?
全社が抱える課題に対して、何を人財育成で解決しようとしたのか
社員一人ひとりがDXに対する考え方や取り組み姿勢にばらつきがあり、全社としてのDX推進に一体感やスピード感がありませんでした。これでは思うようにDXが進まないと思い、一人ひとりが危機感や当事者意識を持ってDXに取り組めるよう、中長期的に学習、育成ができるプラットフォームが必要だと考えました。
人財育成の目的・目標
全社員がDXを理解し、自らの業務という狭い範囲に固着せず、ビジネスそのものを変革させ、かつ推進していける人財を育成したいと考えています。2025年までには、全社員のリテラシーを向上させ、全員が自分事として認識する状態へ持っていき、全社員の約10%がDX専門人財として高度な知識を習得し、各機能組織で推進役として配置することを目指しています。最終目標は、各部門がDXというより、全社で自然にトランスフォームできる風土をつくること、そのことが顧客価値の創出につながると信じています。
ディジタルグロースアカデミア(以下、DGA)を選んでいただいた理由は何ですか?
いくつかの教育プログラムを検討しましたが、DXコンサルティングや人財育成体系の策定、育成プログラム実施など、一緒に伴走していただける点とその実現にコミットしていただけた点に共感しました。
また、いくつかお見せいただいたコンテンツにおいてオリジナル感と統一感があり、とりわけe-Learningコンテンツにおいては、講師が画面に映って講義しているスタイルが馴染みやすく、解説も理解しやすいと感じました。
さらに、アセスメントを活用した人財の選定や研修後の人財再配置など、教育以外の施策も含めてトータルにご支援いただける点が他の研修会社にはない良さだと感じています。
1stステップで人財育成体系を策定し、2ndステップで教育の準備・実施というプロセスを踏みましたが、それぞれのステップでどのようなことを重視されました?
教育の目的・目標を達成するための、人財育成体系策定のこだわりポイント
3年間の中期計画で育成プランを策定したいと考えました。まず、DX人財像は、IPAの定義をそのまま引用するのではなく、当社の目指す姿と照らし合わせながら必要に応じてオリジナリティを出して定義し、かつ育成後の活躍も見据えて、適切なポジションへの配置など、将来展望も踏まえることを重視しました。
また、各機能組織における課題を徹底的に分析し、これらの課題を解決するための理想的な人財像を設定することも重視しました。これにより、実際の業務において必要なマインド・リテラシー・スキルを明確にでき、育成プランに反映させることができます。このようなアプローチによって、我々のDX人財育成プログラムは具体的で実践的なものとなると考えました。
教育の目的・目標を達成するための、教育の準備・実施のこだわりポイント
全社を一度に育成することは困難でしたので、まずは、ある程度のリテラシーを有する人を優先的に選定することとしました。選定においては、アセスメントによる適性やリテラシー診断と、本人の意思や職場の想いを掛け合わせました。育成プログラムへの参加においては、上長より職場での期待や実際の業務に活かす方法などの意識付けを行い、積極的な参加を促すようにしました。これにより、学習プロセスを効果的に進め、高い専門性を持つ人財を育成するとともに、学んだ知識やスキルを実務に繋げ、より効果的な成果を上げられるようになると考えます。
また、学習の過程で、理解度も計りたいと考えました。理解度テストや第三者による研修受講時の状態観察を通じて、学習の進捗と理解度を評価するのみでなく、個々の成長に合わせたサポートや調整を行います。これにより、個別のニーズに合わせた教育環境を整備・提供できると考えます。
教育をe-Learning+ワークショップで構成された理由は何ですか?
e-Learningのみの学習では、一過性になり継続性に課題を感じていたため、聞くだけのe-Learning(インプット)に加え、その後に自ら考えてアウトプットを創出しながら学べるワークショップを組み合わせることが不可欠と考えたからです。
e-Learningでは、DGAのサブスクリプション型サービス「みんなデ」を導入いただきました。「みんなデ」を選んでいただいた理由は何ですか?
自社製のオリジナルコンテンツであるためコンテンツ間で統一感があること、画面上に講師が映り込むことで訴求力があること、そしてなによりDXへ取り組む意義と理由などマインドの醸成から学習できる点が大きかったです。
また、年間を通して開示されるので、時間に縛られることなく、いつでも、どこでも、どんなデバイスからでも受講可能であることも理由の一つとしてあります。
教育を全社展開するにあたり、e-Learning「みんなデ」やワークショップ受講の必要性を理解いただくために、どのような工夫をされましたか?
教育の全社展開にあたっては以下4点を取り組みました。これらの取り組みにより、全社教育の展開においてトップマネージメントの関与や各部門の協力、従業員への訴求力を高め、受講率向上と意義理解を促進することができました。
1. トップマネージメントへの訴求と部門への連携
教育を全社展開する際には、トップマネージメントの理解と支持が不可欠です。執行役員会での説明を通じて、トップ層に計画の意義や成果について説明し、各部門への訴求力を高めました。その後、部門ごとに協力を得るための取り組みも行いました。
2. 効果的な情報発信の工夫
e-Learningプラットフォーム内で社長メッセージを一番上に配置し、取り組みの意気込みを示すことで、従業員への意義を明確にしました。また、フライヤーやポスターを作成し、従業員にアピールするためのツールとして利用しました。これにより、取り組みの重要性を伝える効果がありました。
3. 競争意識の活用
e-Learningの受講率向上を図るため、部門ごとに受講率のランキングを作成し、お知らせとして掲示しました。これにより、部門間に競争意識が生まれたとともに、従業員が積極的に受講する刺激となり、受講率向上につながりました。
4. 多角的な情報発信
全社イントラネットの掲示板も活用して、受講促進のメッセージを掲載し、受講のリマインドを行いました。異なるチャネルを使って情報を発信することで、従業員への浸透度を高めることができました。
教育を実施して、受講前後で受講生やその職場の意識にどのような変化がありましたか?
DXの真の目的、デジタライゼーションにとどまらず、自分事として取り組む必要性について理解が深まっていると感じます。とりわけ、マインドセットプログラムにおいては大きな成果につながっており、これまで受け身であったり、DX推進部任せだったりした雰囲気が、「自分たちで何とかしないといけない」「あの講座でこんなこと言っていたよな」などのコメントが増え、自分事化の浸透しているように感じます。さらなるリテラシーやスキル向上プログラムが進むにつれて、部門の中で人財を育て、成果出しに向けて実践し、新たなアイデアの創出につながればと期待しています。
社員一人ひとりのDXに対する適性を見極める上で、DGAのサービス「DX適性アセスメント」をご利用いただきましたが、結果に対して新たな発見はありましたか?
DX適性アセスメントを行うことによりデータで個々人の適性を把握でき、部門ごとに高い適性を持ち合わせた人財がいることに気づけました。また、どのような人財が向いているかが評価項目の数値化によって可視化できた点はとてもよかったと思います。一方で、適性スコアが高いことがDXを正しく理解していることや職場展開できることに必ずしも紐づかないことも、実態と照らし合わせることで明確になりました。
最後に、さらなる風土醸成/組織変革を目指して、今後の展望を教えてください。
現時点では、大きく2つのことを検討しています。1つは、機能組織の課題と施策から将来のあるべき人員配置を設定すること。もう1つは、すべての教育受講を終えた専門人財に対する業務への転換状況の把握とそのフォローアップです。引き続きご協力をお願いします。
ありがとうございました。
【編集後記】
DXはある特定の部門や人財が実施するのではなく、全員が主役となり、全員が実施するものだというマインドが醸成されたことは非常に大きな効果であり、その次につながる成果だと感じました。DX推進部の方々とは、日頃より週次定例ミーティングでコミュニケーションをとらせていただいており、会社を変えたい、そのためにあの手この手を弊社メンバーと一緒に考えて実行したいという想いが印象として伝わってはいましたが、今回のインタビューを通じて、皆さんの口からそのこと語っていただけたこと、および第1段階や第2段階ではあるもののそれが成果として表れていることに喜びを感じました。今は第1期生の教育実施段階ではありますが、本当の成果出しに向けて、またデクセリアルズ様の目指す姿の実現に向けて、引き続きともに活動できればと思います。
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