データ分析未経験者も取り残さない、株式会社大林組から学ぶ全従業員のデータ活用スキル育成
更新日:2023年6月19日
あらゆる企業でデータ活用による業務効率化や品質向上が求められる現代において、全従業員がデータ活用スキルを持ち、データ活用に取り組むことが、企業の成長に関わる重要な要因となってきています。この流れは建設業においても同様であり、建設業大手の大林組では全従業員を対象としたデータ活用スキルの育成を行っています。
本コラムでは、大林組の取組を参考に、全従業員を対象としたデータ活用スキル育成のあるべき姿について解説いたします。
大林組は建設業特有の長時間労働や人材不足、属人化と言った課題を解消するため、2020年より全従業員を対象としたデジタル人材育成を本格的に検討し、eLearningや研修、資格取得促進と言った施策を複合的に実施しています。受講履歴のデータを活用しながら全従業員の受講を喚起し、PDCAサイクルを回す取り組みを絶えず継続しており、全従業員を対象としたデジタル人材育成において先進的な企業のうち1社です。
今回は大林組の多様なデジタル人材育成の取組の中で、全従業員を対象としたデータ活用スキルの育成施策についてご紹介します。
研修「データ活用のいろは」
データ活用スキルの育成というと、データ分析ツールの操作方法など分析手法がイメージされがちです。それも重要ではありますが、まず行うべきは分析手法よりも、データがどのようにビジネス上の価値に結びつくのかを学ぶことです。
大林組では、「データ活用のいろは」という研修によって、いろは、つまり入口として身に付けるべき知識の習得を促しています。データがどういったビジネス上の価値に結びつくのか、データをどのように扱うべきかという流れや注意点を、事例を交えて伝えています。
こうしたデータ活用の入口としての知識は、データに関わる専門的な職種に就く方だけが学べばよいというものではありません。経営層や管理職であればデータによる報告を受けて意思決定を行ったり、営業の方であればCRMのデータを見た営業活動を行ったり、建設現場の方であれば作業の進捗や品質をデータで確認したり、データとかかわりが無い仕事は無いと言ってもよく、全ての方が学ぶべき知識であると言えるでしょう。
この「データ活用のいろは」研修を受講した上で、具体的な分析手法などを学ぶことが、データ分析によりビジネス上の価値を生み出すことに繋がるのです。
研修「はじめてのモダンExcel」
本格的なデータ分析には、多くのビジネスパーソンにとって初めて触れるようなデータ分析ツールがつきものです。とはいえ、触ったことの無いツールとなると、苦手意識が前面に出てしまう方も多くいます。
そこで、ビジネスパーソンにとって最も身近な分析ツールと言えるExcelを用いることが、新たなツールによる苦手意識の壁を感じさせず、データ分析に取り組んで頂く事に繋がるでしょう。
特に日ごろ業務でPCを用いる方であれば、多くの方がExcelを使い慣れている事でしょう。
とはいえ、Excelを簡易な表の作成や計算にしか使っておらず、その機能の広さを知らない方も多いのではないでしょうか?
大林組の実施する「はじめてのモダンExcel」研修は、Excelをより応用的に使いこなし、「データ分析」に活用するための手法を身に付ける研修です。「モダン」は「現代的な」という意味合いであり、モダンExcelとは、Excelに近年追加されたデータを集計・可視化する一連の操作手法の事を指します。
研修を受講しながら、使い慣れたExcelというツールを実際に動かしてデータを集計・可視化し、未知のツールへの抵抗なくデータ分析を体験することで、「Excelでここまでできるのか」という達成感を得て頂く事に繋がるでしょう。
研修「はじめてのPower BI」
モダンExcelは非常に優れた機能ですが、とはいえExcelで出来る範囲にも限界があります。ビッグデータを扱う場合や、より伝わりやすい表現手法を用いたいというときに、他のツールの必要性も生じてきます。
大林組では社内で扱うデータ分析ツールの1つに、Microsoft社のBIツールであるPower BIが挙げられます。
Power BIはExcelに比べて遥かに多くのデータを扱う事ができ、多様な表現手法を持ち、高速集計を可能とするツールです。
レポート作成のための「Power BI Desktop」というツールが無償で提供されている(2023年5月時点)という事もあり、多くの企業で導入が進んでいます。
同じMicrosoft社が開発している言う事もあり、モダンExcelとPower BIは操作が類似しており、モダンExcelに触った事がある方であれば、特にスムーズに扱うことができます。
大林組の実施する「はじめてのPower BI」研修は、Power BIに始めて触る方を対象に、Power BIは何のためのツールなのか?Excelとの違いや使い分け方、大林組の社内活用事例をご紹介するとともに、基本的な操作方法などを学ぶ研修です。
モダンExcelに触ったことがある方はもちろんの事、触ったことがない方であっても、ツールの意義や特徴、事例と言った概念を学んだ上で操作を行うため、予備知識なしにPower BIの基本的な操作方法や、担当業務においてどのように用いるかと言った事が理解できる内容です。
「はじめてのモダンExcel」と「はじめてのPower BI」、双方を受講することにより、データ分析に関する基本的な知識や操作方法を身に付けることができるように構成されています。
研修「データ活用のAtoZ」
データ活用の入口としての知識と、ツールの操作方法を理解することにより、自身の業務においてデータ活用をまずは企画したり、データを実際に分析したりすることができるでしょう。とはいえ、ここまでご紹介した3つの研修で、データ活用に必要な知識やスキルを網羅的に学習することができているでしょうか?
いえ、従前の3つの研修では網羅的な学習とは言えず、まだまだ不足しています。
データのプロフェッショナルとされる「データサイエンティスト」に必要なスキルセットを定義することを目的の一つとして生まれた「データサイエンティスト協会」の発表を参考にしてみましょう。
2021年度版「データサイエンティスト スキルチェックリストver.4」として、データサイエンティストに必要なスキルは572の項目があると言われており、見習いレベル(アシスタント)においても、185のスキルが挙げられています。
3つの研修で学ぶことができているのは、185のスキルのうちごく一部でしょう。
データ活用を進める上ではこのように多数のスキルが必要とされます。大林組の実施する「データ活用のAtoZ」は、それらのスキルの中でも、データ活用の入口から出口の一連の流れ中で特に重要なスキルを中心に学ぶ研修です。
この研修においても、185の見習いレベルに必要なスキルを全て網羅できるわけではありませんが、研修後に更に深めたい方向けの学習方法や、見習いレベルに到達していることを証する「データサイエンティスト検定 リテラシーレベル」(以下 DS検定)という資格試験を、さらなるステップアップの手段の1つとしてご紹介しています。
以上、「データ活用のいろは」「はじめてのモダンExcel」「はじめてのPower BI」「データ活用のAtoZ」の4つの研修が、対象と問わず全ての受講が推奨されていることにより、全従業員が必要なスキルを入口から出口まで幅広く、また多様な立場の方が躓かずに学習ができるように構成されているのです。
こうして全従業員がデータ活用のスキルを身に着けていく事が、組織としてデータ活用の成果を高める為にも有効な施策となるでしょう。
では、大林組ではこれらの研修を実施し、どのような成果が生まれているのでしょうか?
大林組DX本部本部長室デジタル教育課 倉形課長はこう述べます。
「目に見える成果としては、BIツールを利用する従業員が増えてきていることがあげられます。累計で約2,000人の従業員がPower BIを利用していますが、この数字はデータ活用の重要性を研修で伝えていることが大きいと思われます。我々は データドリブンな教育 を行っており、参加者の属性やアンケート結果の分析を常に行い、研修内容にフィードバックしていますが、データ活用の研修受講者のアンケートを見ると満足度は平均して90%を超えていることから、研修のPDCAにデータを活用する事の重要性を私自身も感じています。全従業員がデータを活用し、分析結果を基に行動につなげられるよう、今後もデータドリブンな教育をしていきたいと思います。」
大林組の取組は、今後、全従業員を対象とデータ活用スキルの育成を実施していく多くの企業にとって参考となる事でしょう。
デジタルグロースアカデミアは、データ活用人材の育成体系や研修プログラムを、全社を対象としたプログラムから、専門人材を対象としたプログラムなど、幅広く提供しており、迅速なDXでの効果創出を目指しています。
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