Columnコラム

DX人材の採用が難しい理由は?成功に導く採用手法を解説

更新日:2025年11月13日

「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進せよ」。
経営層の強い期待を受け、多くの企業が変革の必要性を強く意識しています。
しかし、その意欲とは裏腹に、「DXを具体的に推進できる人材がいない」という現実的な壁に直面しているケースが多く見られます。

外部から即戦力となるDX人材を採用しようにも、従来の手法では全く応募が集まらない。やっと面接にこぎつけても、求めるスキルと候補者のスキルが噛み合わない。優秀な人材ほど、名だたる企業との熾烈な争奪戦に敗れてしまう。そんな厳しい現実を前に、途方に暮れている採用担当者様は少なくありません。

この記事では、なぜDX人材の採用はこれほどまでに難しいのか、その根本的な理由を解き明かし、この困難なミッションを成功に導くための具体的な5つのステップと、効果的な採用手法を詳しく解説します。

目次

    なぜDX人材の採用はこれほど難しいのか?

    DX人材の採用が難しいのには、明確な理由があります。その構造を理解することが、戦略を立てる上での第一歩です。

    人材の希少性と圧倒的な需要過多

    最大の理由は、市場における圧倒的な需要と供給のアンバランスです。あらゆる業界の企業が一斉にDX人材を求めているのに対し、ビジネス課題を理解し、高度なデジタル技術を駆使して変革をリードできる人材の数は極めて限られています。この需要過多が、採用競争の激化と採用単価の高騰を招いているのです。

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    公開日:2024年11月11日 更新日:2025年11月13日 【事例あり】DX人材育成の7つの課題を解決する5つのステップを徹底解説! DX人材育成における課題にお悩みではありませんか?本記事では、多くの企業が直面する7つの具体的な課題と、その解決策を体系的に解説します。育成を成功に導くための具体的なステップや、企業の成功事例も紹介し、貴社のDX推進をサポートします。

    求めるスキルセットのミスマッチ

    「DX人材」と一括りに言っても、そのスキルは多岐にわたります。しかし、多くの企業が「ビジネスもITも分かり、プロジェクトも推進できるスーパーマン」のような、現実にはほぼ存在しない理想像を追い求めてしまいがちです。自社の課題解決に本当に必要なスキルは何かを具体的に定義できていないため、採用のターゲットが曖昧になり、ミスマッチが頻発します。

    候補者に選ばれるだけの魅力不足

    優秀なDX人材は、複数の企業から引く手あまたです。彼らは給与や待遇だけでなく、「挑戦的な課題があるか」「スキルアップできる環境か」「裁量を持って働けるか」といった、キャリアにとっての魅力を重視します。旧態依然とした組織文化や硬直的な人事制度のままでは、いくら高い年収を提示しても、魅力的な成長機会を提供する企業に選ばれてしまうのです。

    DX推進に必要な人材とは?

    企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させるためには、どのような人材を採用すべきかを見極めることが最初の重要なステップです。単にデジタルツールを使いこなせるだけでなく、ビジネスそのものを変革する意欲と能力が求められます。IPA(情報処理推進機構)が示す考え方に基づくと、DX推進人材の適性は「DX適性」と「デジタイズ適性」の2つの軸で整理することができます。

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    DX適性とデジタイズ適性

    DX人材の採用を考える際、その適性を「DX適性」と「デジタイズ適性」に分けて考えると、求める人物像が明確になります。「デジタイズ適性」は、既存の業務プロセスを理解し、デジタル技術を用いて効率化や自動化を実現する能力を指します。一方、「DX適性」は、現状に満足せず、デジタルを前提として新たなビジネスモデルや顧客価値をゼロから創造していく能力です。

    DXの本来の目的である「競争上の優位性の確立」を実現するためには、後者の「DX適性」を持つ人材の採用が特に重要となります。

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    攻めのIT投資と守りのIT投資

    人材を見極めるもう一つの視点として、企業のIT投資の種類が挙げられます。IT投資は、既存業務の効率化やコスト削減を目的とする「伝統的なIT投資(守りのIT投資)」と、売上拡大や新たな付加価値創出を目指す「新たなIT投資(攻めのIT投資)」に大別されます。DXで採用すべき人材は、後者の「攻めのIT投資」を担える人材です。

    「守りのIT投資」ではシステムの安定稼働が重視される一方、「攻めのIT投資」では、市場の変化に迅速に対応するためのスピードや柔軟性が求められます。そのため、採用においては、ウォーターフォール開発の経験者よりも、アジャイル開発のような手法で、試行錯誤しながら価値創造を推進できる人材が適していると言えるでしょう。

    投資の種類 伝統的なIT投資(守りのIT) 新たなIT投資(攻めのIT)
    目的 コスト削減、業務効率化 売上・付加価値向上、新規事業創出
    重視する要素 安定性、信頼性 スピード、柔軟性、拡張性
    開発手法 ウォーターフォール アジャイル、DevOpsなど
    求められる人材像 既存システムを安定的に維持・運用できる人材 ビジネス部門と連携し、新たな価値を創造できる人材

    参考:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 ─ ITSS+(プラス)概要 | デジタル人材の育成

    DX人材採用における成功ポイント

    DX人材の採用では、単に優秀な人材やIT部門の専門家を集めるだけでは不十分です。実際には、候補者の「向き・不向き」を見極めることが最も重要なポイントとなります。

    DX人材の適性を判断する際には、前述のとおり「DX軸」と「デジタイズ軸」の2つの観点から評価することが効果的です。DX軸とは、新規ビジネスをデジタルで共創していく働き方を指し、デジタイズ軸とは、既存ビジネスをデジタル技術で支援していく働き方を意味します。

    この2軸のマトリクスで人材を分類すると、DXを牽引できる人材が明確になります。最も適性が高いのは「どちらもこなせる人材」であり、柔軟性と幅広い視点を持つマルチタスク型の人材です。次に「DX向きの人材」は、仮に既存ビジネスの経験が浅くても、DXプロジェクトでは理想を現実にする推進力を発揮できます。

    一方で注意が必要なのは「デジタイズ向きの人材」です。DXプロジェクトには向いていないものの、既存ビジネスのデジタル化では高い成果を出せるため、適材適所の配置が求められます。最も避けるべきは「適性が現在化していない人材」であり、自分の強みが活かされていないタイプの方は、若手に多く見られるため、2つの軸に対する適性をじっくり見極める必要があります。

    人材タイプ DX軸適性 デジタイズ軸適性 推奨配置
    どちらもこなせる人材 高い 高い DX推進のコア人材
    DX向きの人材 高い 低い~中程度 新規事業・変革プロジェクト
    デジタイズ向きの人材 低い~中程度 高い 既存業務のデジタル化
    適性が現在化していない人材 低い 低い 育成・再評価が必要

    DX人材採用を成功に導く5つのステップ

    DX人材という「希少種」を採用するためには、従来の採用活動とは異なる、戦略的なアプローチが必要です。

    手順1:経営戦略に基づき必要な人材像を定義する

    採用活動の起点となる最も重要なステップです。「3年後に売上を20%向上させる」という経営目標があるならば、「そのために必要なECサイトのデータ分析を担うデータサイエンティストを1名採用する」というように、経営戦略と紐づいた、具体的で明確な人材像(ペルソナ)を定義します。

    手順2:候補者に響く自社の魅力を言語化する

    「なぜ、数ある企業の中から、わざわざ当社を選ぶべきなのか?」この問いに答えるための、自社の魅力(EVP:従業員価値提案)を明確にします。「業界のトップ企業で大規模データに触れられる」「レガシーシステムからの脱却という、難易度の高い課題に挑戦できる」「フルリモート・フルフレックスで裁量を持って働ける」など、候補者の心に響くメッセージを準備します。

    手順3:攻めの採用手法を組み合わせる

    求人媒体で応募を待つ「待ち」の採用だけでは、DX人材に出会うことはできません。企業のデータベースに直接アプローチする「ダイレクトリクルーティング」や、社員の紹介を活用する「リファラル採用」など、企業側から積極的に候補者を探しにいく「攻め」の採用手法を組み合わせることが不可欠です。

    手順4:スキルを正しく見極める選考プロセスを設計する

    DX人材のスキルは、職務経歴書や短時間の面接だけで見極めるのは困難です。実際の業務に近い課題を与え、その解決プロセスを評価する「コーディングテスト」や「ワークサンプルテスト」を取り入れたり、現場の第一線で活躍するエース社員を面接官にアサインしたりと、スキルを多角的に評価できる選考プロセスを設計します。

    手順5:入社後の活躍と定着を支援する

    採用はゴールではありません。入社した人材が早期に組織に馴染み、最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、オンボーディング(受け入れ)のプロセスを整備することが重要です。メンター制度の導入や、経営層との定期的なコミュニケーション機会の創出、挑戦を後押しする文化の醸成などが、エンゲージメントを高め、早期離職を防ぎます。

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    DX人材にアプローチする具体的な採用手法

    「攻めの採用」を実践するための、具体的なチャネルをご紹介します。

    採用手法 メリット デメリット
    ダイレクトリクルーティング 転職潜在層にもアプローチ可能。自社の魅力を直接伝えられる。 候補者の選定やスカウト文面の作成に工数がかかる。
    リファラル採用 採用コストを大幅に抑えられる。カルチャーフィットした人材を見つけやすい。 人脈に依存するため、候補者が見つからない可能性がある。
    専門エージェント DX人材の市場動向に精通しており、非公開の優秀な人材を紹介してもらえる。 採用決定時の費用が高額になりやすい。
    副業・フリーランス活用 正社員採用よりスピーディかつ柔軟に専門人材を確保できる。 業務範囲が限定的。帰属意識の醸成が難しい。

    ダイレクトリクルーティング

    BizReachやLinkedInといったプラットフォームに登録している人材のデータベースから、自社の要件に合う候補者を探し出し、直接スカウトメッセージを送る手法です。

    リファラル採用

    自社の社員に、友人や知人を紹介してもらう手法です。社員からの紹介であるため、候補者のスキルや人柄に対する信頼性が高く、入社後の定着率も高い傾向にあります。

    IT・DX人材専門のエージェント

    IT・Web業界やDX領域に特化した人材紹介サービスです。業界の動向や技術トレンドに詳しいため、自社の曖昧な要求を的確に言語化し、最適な候補者を探し出してくれます。

    副業・フリーランス人材の活用

    特定のプロジェクトで高度な専門性が必要な場合、正社員採用にこだわらず、副業やフリーランスの専門家と業務委託契約を結ぶのも有効な手段です。まずはプロジェクト単位で協業し、双方の相性が良ければ正社員登用を打診するという進め方も可能です。

    社内育成(リスキリング)との両輪が不可欠

    即戦力となる外部人材の採用は、DXを迅速に立ち上げる上で非常に重要です。しかし、長期的な視点で見れば、自社のビジネスを熟知した既存社員をDX人材へと育成(リスキリング)していく取り組みと、採用を両輪で進めることが、持続的なDX推進体制を築く上で不可欠です。外部から採用した人材が、社内の育成をリードする役割を担うといった相乗効果も期待できます。

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    公開日:2023年4月4日 DX人材の育成を成功させるには?事例やロードマップなどを紹介 企業のDX推進が叫ばれるなか、同じように必要性が説かれているのはDX人材の育成です。本記事では、DX人材育成の事例やスキルマップに加えて、社内育成するメリットやデメリットを解説します。社内で人材育成を検討していたり、何から始めれば良いかわからなかったりするときの参考にしてください。

    まとめ:採用戦略のDXがDX人材採用の鍵

    DXを成功させるためには、自社の状況に適した方法でDX人材を確保することが極めて重要です。DX人材の採用方法は、大きく「外部からの採用」と「社内での育成」の2つに大別できます。どちらか一方だけではなく、これらを組み合わせながら、自社の事業戦略や組織文化に合った人材採用プランを立てることが成功への鍵となります。

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